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「おい...ッ」



少し焦った声と共に目元を拭われて気が付いた。頬を一筋流れる滴。多分、生理的なものではない。
汗ばんだ掌、恋人達がするように絡み合う互いの指。敷布団に押し付けられた私の手は小刻みに震えていた。



「続けてください、」

「...嫌がってる女抱く趣味なんざねェよ」



嫌じゃない。本当だ。嫌じゃないのに止まらない。
涙と一緒にこの想いも、全部綺麗に流れてしまえばいい。
一度溢れ出したものは簡単には止まってくれない。ボロボロ涙を零す情けない私の背中を副長は黙って撫で続けてくれた。

これ以上優しくしないで。馬鹿な私はまた勘違いしてしまうから。貴方の全てを、自分だけのものにしてしまいたくなるから。



「俺は宿を借りる。さっさと寝ろクソガキ」



寝坊したら切腹だからな。
一見突き放された様にも聞こえるが、私の為を思って紡がれた言葉に胸の奥がきゅっと音を立てる。
身なりを整え、足元へ蹴飛ばされた毛布を私の身体に掛けると彼は部屋を後にした。
ほろ苦い香りを残して。







真田Aと出会ったのは真選組がまだ浪士組と呼ばれている頃だった。
土方が駆けつけたとき辺りには男が4、5人転がっていて、少し離れたところに一人、女がいた。

袖や裾がボロボロに破けた着物。対称的に艶のある黒髪を揺らして"少女"は音もなく立ち上がった。無気力で虚ろだった瞳が一瞬にして殺気を帯びる。その凍てつく様な眼光はこれまで数多の無謀な喧嘩に挑んできたバラガキさえも怯ませた。



『コイツぁ驚いた。最近巷を騒がせてるクソガキがいるっつーから来てみれば...女だったとはな』

『...』

『生憎、俺は女にゃ手ェ出さねーよ。何処で拾ってきたか知らねェが、さっさとその腰に提げてる物騒なモン捨てな』



少女は土方の言葉に耳を傾けることなく緩慢な動作で鞘に手を掛け、黒光りする刀を引き抜く。手の甲で頬に付着した返り血を拭うと深く息を吐き、容赦なく頭上に刀身を振りかざした。



『ッチ...クソガキが...』



間一髪で避ける土方。束ねていた髪が数本斬られて宙を舞う。成程、女だと見くびっていると危ないかもしれない。

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設定タグ:銀魂 , 土方十四郎 , 真選組   
作品ジャンル:アニメ
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マツリ(プロフ) - Hiさん» 返信遅くなってしまいすみません🙇🏻‍♂️一気見ありがとうございます...!!嬉しいです! (3月3日 0時) (レス) id: 07cc4afb9c (このIDを非表示/違反報告)
Hi(プロフ) - とても面白いお話で今日一気見しました、、!!! 続き楽しみにしています(*^^*) (2月23日 3時) (レス) @page37 id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
マツリ(プロフ) - Honokaさん» ありがとうございます...!私も報われて欲しいです😂 (8月26日 22時) (レス) id: 07cc4afb9c (このIDを非表示/違反報告)
Honoka - 続き楽しみにしてます!!夢主ちゃん報われるといいな、、、、 (8月26日 16時) (レス) id: c2fc80e477 (このIDを非表示/違反報告)
マツリ(プロフ) - ななしさん» ありがとうございます!更新頑張りますね...! (2023年1月5日 12時) (レス) id: 153e8c8a98 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:マツリ | 作成日時:2021年7月16日 16時

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