31 ページ31
.
「...んで？勢い任せにあのマヨネーズバカ襲っちゃいましたってか」
バカ、を態とらしく強調した銀時の問いにAは無言で頷いた。緊張感のない顔でモッチャモッチャと餡子の味を噛み締めながら彼女を一瞥すると当の本人は少し不服そうな顔をした。
「一応言っておきますけど旦那が想像しそうな如何わしいことは何もしてませんからね...すぐ突き飛ばされちゃったし」
「そりゃ仕方ねーだろ、相手は雌ゴリラなんだか......いででで！！？！」
銀時の頬を力いっぱい引っ張るA。やけに伸びるそれは先程彼が食べていた大福の様である。
「バカですよね、自分から関係を壊しちゃって」
いっそ、嫌いだとかそういう酷い言葉で振ってくれていたら元通りになれたのかもしれない。振られることは重々承知していたから。自分を突き放さない土方の優しさに苦しめられているなんて皮肉にも程がある。
「あァ、お前はバカだよ」
「...」
「...一つだけ聞きてェことがある」
A、と珍しく名を呼ばれ反射的に顔を上げる。普段は死んだ魚みたいな眼をしている癖に、不意打ちで鮮やかな紅に射抜かれ不覚にもときめいてしまった。
肩に添えられた骨張った手。土方とはまた少し違う、男の手だ。彼の唇がゆっくりと近付いてきて耳元に吸い寄せられる。伝わる息遣い、早まる心音......いや何これ。ただ話していただけなのにどうしてベタな少女漫画みたいな空気になっているんだ。
しかし彼が次に放った一言で甘酸っぱい空気は一瞬にしてぶち壊された。
「今日のパンツ何色？」
「.........は？」
「あー...やっぱいーわ。こういうのは自分の目で確かめた方がいいよな」
「いや、あの。は？」
「ごちそーさん、用事思い出したから帰る。困ったらいつでもウチ来いよ」
微妙な空気から逃れる様に腰を上げる銀時。ひらひらと手を振ると歩き出す、取り残されたAを振り返りもせずに。
＊
悪ィな、と銀時は胸中で呟いた。流石に理由もなく警察相手にセクハラ紛いの行為をする程馬鹿ではない。
物陰からこそこそと此方を睨み付ける存在にはとっくに気が付いていた。
「おーおー、警察の癖に盗み聞きですかコノヤロー」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 794人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
マツリ(プロフ) - Hiさん» 返信遅くなってしまいすみません🙇🏻♂️一気見ありがとうございます...！！嬉しいです！ (3月3日 0時) (
レス) id: 07cc4afb9c (このIDを非表示/違反報告)
Hi(プロフ) - とても面白いお話で今日一気見しました、、!!! 続き楽しみにしています(*^^*) (2月23日 3時) (レス) @page37 id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
マツリ(プロフ) - Honokaさん» ありがとうございます...！私も報われて欲しいです😂 (8月26日 22時) (レス) id: 07cc4afb9c (このIDを非表示/違反報告)
Honoka - 続き楽しみにしてます!!夢主ちゃん報われるといいな､､､､ (8月26日 16時) (レス) id: c2fc80e477 (このIDを非表示/違反報告)
マツリ(プロフ) - ななしさん» ありがとうございます！更新頑張りますね...！ (2023年1月5日 12時) (レス) id: 153e8c8a98 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：マツリ | 作成日時：2021年7月16日 16時
