なだめて惑わせて(草加雅人) ページ6
その日の私は、かつてないほど怒っていた。
「A、本当にごめん。そろそろ機嫌を直してくれないかな」
「……やだ」
わざと草加くんに背中を向け、うずくまるようにしてソファーに座る。
今日は待ちに待ったデートだというのに、彼は待ち合わせに遅れ、私は1時間以上待たされた。
オルフェノクが出たのだから仕方ないかもしれないけど…
「全然来ないし、電話も繋がらないし、すごく心配したんだから…」
「心配かけてごめん。本当に、俺が悪かった」
「反省してない」
「反省してるよ」
その言葉に振り返り、彼の目をキッと睨む。
「嘘。じゃあなんでちょっと嬉しそうなの」
案の定、彼は頬が緩んでにこにことしている。
どうりで先程から声が上擦っている訳だ。
「君がそんなに怒るほど、俺のことを心配してくれたのが嬉しいんだ」
「……そんな」
そんなことを言われたら、怒れなくなってしまう。
何も言い返せなくなり背中を向けて黙っていると、不意に後ろから抱き締められた。それも、逃がさないように、強く、強く。
「そうやって怒るくらい、君は俺のことが好きなんだ」
まるで暗示をかけるように、甘く、扇情的な声が耳元で囁く。
「……うん、好き」
恥ずかしさと高鳴る鼓動の中、どうにか声を絞り出し、ぽつりと呟く。
「俺も好きだよ、A。君が俺を想ってくれるくらい……俺も、君を想ってる。言葉じゃ伝えきれないほどにね」
気づけば彼のひんやりとした冷たい指が、肌をつたうように滑り込んでいた。
9人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
mtnz(プロフ) - namelessさん» 感想ありがとうございます!!微妙な関係性、いいですよね……。閲覧感謝です!🙏また新たな良き関係性を書きたいと思います! (4月4日 17時) (レス) id: 2225662d3f (このIDを非表示/違反報告)
nameless - 草加夢の関係性とても好きです……………😭😭😭めちゃくちゃたすかりました…………😭😭😭😭😭😭 (4月4日 3時) (レス) id: 61c846afc2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:mtnz | 作成日時:2024年2月18日 1時