花の色（相川始） ページ22
春の夜。
満開の桜は月明かりの中で、その花びらを雨のように降らせている。
その光景を、私と彼は時が経つのも忘れ、眺めていた。
「本当に、綺麗ですね」
「ああ」
私はちらりと彼の顔を盗み見ると、彼は優しい表情をして月の光に照らされていた。
その横顔があまりに綺麗で、私はこうして彼の傍らにいられる奇跡に、胸がいっぱいになった。
「――始さんは、一万年前から今まで、ずっと生きてるって…仰っていましたよね」
「…それがどうかしたのか」
「私にとって、始さんと過ごした時間はかけがえのない…忘れられない、一生の宝物です。私の人生において、これ以上のことはありません。――だけど、始さんにとって私との時間は、ほんの一瞬に過ぎない。…いつかきっと、私のことを忘れてしまうんでしょうね」
「それは違うな」
彼ははっきりとした口調でそう言うと、月明かりを背に私の方へ向き直った。
「俺にとってお前は……Aは、月と似ている。不思議と俺の孤独を癒す。姿が見えなくとも、傍にいると…そう感じる。もし俺の前から姿を消しても、お前はこの先俺を照らすだろう」
彼はそう言って私の腰に腕を回すと、そのまま私の身体を搔き抱いた。
包み込む彼の腕の力が強い。
その温もりが、息遣いが、すべてが私を包んで離さない。
「俺がお前を忘れることはない。たとえ忘れろと言われても、お前を思い続ける」
その言葉に、まるで胸の奥に小さな火が灯るような、熱い気持ちになった。
「…約束ですよ。朝起きて、始さんがいなくなっていたら私、どうなってしまうか分かりませんから」
「心配するな。絶対に、お前を置いて行ったりしない」
そう言って彼は私の手を取ると、手繰り寄せるように握った。
私はその手を握り返すと、彼に抱かれたまま微睡みの中に意識を手放した。
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mtnz(プロフ) - namelessさん» 感想ありがとうございます！！微妙な関係性、いいですよね……。閲覧感謝です！🙏また新たな良き関係性を書きたいと思います！ (4月4日 17時) (
レス) id: 2225662d3f (このIDを非表示/違反報告)
nameless - 草加夢の関係性とても好きです……………😭😭😭めちゃくちゃたすかりました…………😭😭😭😭😭😭 (4月4日 3時) (レス) id: 61c846afc2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mtnz | 作成日時：2024年2月18日 1時
