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嘘つき(草加雅人) ページ21

とある昼下がり。
私は草加くんを部屋に招くと、お茶を淹れ、互いにくつろぎながらそれぞれ本を読んでいた。
すると彼が手にしていた本から、一枚の紙がはらりと落ちるのが見えた。

「あっ!」

――見ちゃだめ!

と喉まで出かかって口を閉ざした。
彼は床に落ちた紙を拾うと、そこに書かれた文字を見る。

「これは何かな」

いつもと変わらない優しい声が、かえって不気味に聞こえた。

「違うの…それは、貰っただけで何もないの。無視するのも良くないし……でも、返事するのも草加くんに悪いと思って、何もできないまま、捨てられなくて…」

とっさのことに動揺を隠せず、歯切れの悪い説明をした。
私はきっと彼の信頼を失ってしまった。
何事も無かったとはいえ、秘密にしてしまっていた。
胸の奥から激しい後悔の念が押し寄せる。


「君は優しいね」

顔を上げると、草加くんは穏やかな笑顔を見せた。

「俺の気持ちも、この男の気持ちも……どちらも尊重するんだ。優しい君は」

彼は手にした紙を側に置くと、慰めるように私の頭をそっと撫でた。

「本当に、愛しくてたまらないよ」

そう言って眩しそうに目を細める。

「分かってるかもしれないけど、こうして言い寄ってくる男なんてのは信用しない方がいい。いくら甘い言葉を並べても、結局は自分の欲望のために君を利用するつもりなんだ。詰まるところ、ただの雄に過ぎない。獣なんだよ」

「……それってもしかして、草加くんも?」

彼はぴたりと動きを止めた。
すると忽ち吹き出すように笑った。

「俺は違うさ。俺は何より一番に、君の幸せを願ってる」
「…そっか、ありがとう。ごめんね意地悪なこと訊いて」

彼の濁りのない澄んだ眼差しに、冗談とはいえ申し訳ない気持ちになる。


「――そうやって、君は疑いもしないんだな」

その声はどこか冷たかった。
視線を上げると、草加くんは眉を八の字にして微笑んでいる。
こちらを見下ろすその表情はどこか、私を嘲笑っているように見えた。


「もし、俺がその獣の一人だとしたら――どうする?」

「それは……」


私は戸惑うふりをした。

そんなのは決まっている。
とうに私を骨の髄まで喰い尽くしている彼にならば、騙されたって構わないと――そう思った。

花の色(相川始)→←ひそかな計画(城戸真司)



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mtnz(プロフ) - namelessさん» 感想ありがとうございます!!微妙な関係性、いいですよね……。閲覧感謝です!🙏また新たな良き関係性を書きたいと思います! (4月4日 17時) (レス) id: 2225662d3f (このIDを非表示/違反報告)
nameless - 草加夢の関係性とても好きです……………😭😭😭めちゃくちゃたすかりました…………😭😭😭😭😭😭 (4月4日 3時) (レス) id: 61c846afc2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:mtnz | 作成日時:2024年2月18日 1時

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