ひそかな計画(城戸真司) ページ20
週末。今日も私は喫茶「花鶏」の扉を開けた。
「いらっしゃいま……Aちゃん!」
目を輝かせ笑顔で迎える城戸くんに案内され、席に座る。メニューを受け取ると、彼は次に来たお客さんのところへ向かった。
眩しいくらいの笑顔でてきぱきと仕事をする彼は、誰より輝いている。その姿に自然と口が緩んだ。
そんな私に気づいたのか、彼がこちらのテーブルにやって来る。
「Aちゃん、どうかした?」
「……城戸くんって偉いね。記者の仕事もあるのに、休みの日もこうして手伝って…あんまり無理しないでね」
彼は少し面食らった顔をすると、元気よく言った。
「これくらい大したことないって!それにほら、俺困ってる人とかほっとけない性格だからさ〜……なんて」
店の奥で肘をつき、じーっとこちらを見ている店主の女性が、彼に向かって早く注文を取るように言う。城戸くんは慌てて私の注文を取る。その様子が可笑しくて、思わずくすりと笑った。
しばらくして、彼が注文通りアールグレイの紅茶を持って来てくれる。
「どうぞ」
「ありがとう」
彼はティーカップを丁寧に置く。
すぐに仕事に戻るのかと思えば、立ち去る気配がない。不思議に思っていると彼が沈黙を破った。
「あのさ、Aちゃんって彼氏とか…いる?」
「えっ!?」
「あっ!その、驚かせてごめん…嫌だったら答えなくていいから」
「い、嫌じゃないよ!いない……けど」
思いもよらぬ質問に、ドキドキと胸の高鳴りが抑えられない。動揺を悟られぬよう俯いていると、背の高いもう一人の店員さんが、小声で城戸くんに何か言った。彼はそれに怒ったように何か言い返している。
「……城戸くん?」
「あっ、ごめん!こいつが余計なこと言うからさ…。全然、気にしないで!」
そう言って笑う彼の手に、何やら2枚の紙があることに気づく。
「…それは?」
「実はさ、これ…遊園地のチケットなんだけど、よかったら…行かない?」
「え…!いいの!?」
「もちろん!つーか、Aちゃんじゃないと意味ないっていうか、その…」
よく聞こえない声で言う彼に、先程の店員の男性がその背中を小突く。
「っ……Aちゃんがいいんだ。一緒に行くのは…」
――それって、ほとんど告白なんじゃ……と思い、顔が熱くなる。いやいや、うぬぼれるな、私!だけど少し、期待したりして…。
「…ありがとう。私も、城戸くんと行きたい。遊園地」
そう言うと大袈裟にガッツポーズをする彼が、心の底から好きだと思った。
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mtnz(プロフ) - namelessさん» 感想ありがとうございます!!微妙な関係性、いいですよね……。閲覧感謝です!🙏また新たな良き関係性を書きたいと思います! (4月4日 17時) (レス) id: 2225662d3f (このIDを非表示/違反報告)
nameless - 草加夢の関係性とても好きです……………😭😭😭めちゃくちゃたすかりました…………😭😭😭😭😭😭 (4月4日 3時) (レス) id: 61c846afc2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mtnz | 作成日時:2024年2月18日 1時