信じることと疑うこと(草加雅人) ページ18
待ち合わせ場所に着くと、いつものように彼は優しく微笑んでいた。――隠していた傷跡に気づくまでは。
「その腕、どうしたんだ」
「あ……ちょっとぶつけちゃって。でも全然何ともないよ」
笑って誤魔化すが、彼の厳しい表情は変わらない。
彼は小さく息をつくと、努めて穏やかに言った。
「俺を心配させないよう、君が嘘をついていることくらい分かる。だけど正直に話してくれないかな」
「……ごめんなさい。そうしたいけど、でも…」
すると彼の手が、強く私の両肩を掴んだ。
「俺は君を守りたいんだ。そのためには、本当のことを知る必要がある。だから君には、正直に話して欲しい」
私は俯いてゆっくりと首を振る。
「言えない……だって言ったら、草加くんはきっと」
――きっと灰にしてしまう
「どうして言えないんだ?せめて、その理由だけでも教えてくれないかな」
「草加くんが守ってくれるのは嬉しいよ。だけど……もとは人間で、その心だって残ってるのに…」
「君は優し過ぎる。……あいつらは人間とは違う。その証拠に、君はそうやって怪我を負ったんだろう。俺はただ、不穏分子をできるだけ早く取り除きたいだけなんだ。君を守るためにも」
そう語る草加くんの笑顔は優しい。
それなのに、その言葉が酷く冷たく聞こえるのはなぜだろう。
「でも、そんなこと続けたら……いつか、この世界から誰も――私たち以外誰も、いなくなっちゃうかもしれないよ」
肩に置かれた彼の手に、強い力が籠る。
「俺はそれで構わない。俺たち二人でこの世界を、一から創り直せばいいんだ」
真っ直ぐに私だけを映す彼の目は、冗談を言っているように見えなかった。
「君が不安に思うことは何もない。君はただ、俺に守られていればいい。そうすれば君も俺も幸せになれる。……どうか俺を信じて欲しい」
彼はそう信じて疑わない
私は彼を、信じられるだろうか――
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mtnz(プロフ) - namelessさん» 感想ありがとうございます!!微妙な関係性、いいですよね……。閲覧感謝です!🙏また新たな良き関係性を書きたいと思います! (4月4日 17時) (レス) id: 2225662d3f (このIDを非表示/違反報告)
nameless - 草加夢の関係性とても好きです……………😭😭😭めちゃくちゃたすかりました…………😭😭😭😭😭😭 (4月4日 3時) (レス) id: 61c846afc2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mtnz | 作成日時:2024年2月18日 1時