夢短編集【仮面ライダー】

月夜の夢（草加雅人） ページ13

お城のように高くそびえるビルのテラスで一人佇む。
夜空には月が浮かんで、星が綺麗。
ひんやりと冷たい外の空気に思わずくしゃみをすると、肩にそっと何かが被さる。
「風邪を引くよ」
「…ありがとう」
彼は自分が着ていたジャケットを、私に羽織るように掛けた。まだ温もりが残っていて、まるで彼に抱き締められている気分。
その優しさに胸がじんわりと熱くなって、思わず心の内を話す。
「私ね……小さいころ、お姫様になるのが夢だった。お姫様になって、王子様と結婚するって、そう決めてたの」
目の前に広がる星空は、おとぎ話みたいにキラキラと輝いているのに。私にはお城からの招待状も、毒林檎すらもやってこない。
「――俺じゃだめかな、その王子役」
すると突然、彼は足元に跪いたかと思うと、そっと私の手を取った。その表情は真剣で、胸の高鳴りを抑えられない。
「――愛しい俺のお姫様。これからも、ずっとそばで、君を守らせてほしい」
その全てが照れくさくて、嬉しくて。私はぎこちなく「喜んで」と返事すると、彼は嬉しそうに笑って、「じゃあ目を瞑って」と優しく囁く。
私はきっと――次に目を開けたそのときに、ようやく眠りから目覚めるの。

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