夢短編集【仮面ライダー】

望ミテ欲ス（火野映司） ページ12

「映司くんって、どんな子がタイプなの」

料理店「クスクシエ」の開店準備中、皿を磨いていた彼の手が止まる。

「タイプ、か……俺はAちゃんのことが好きだから、他に考えられないよ」
「じゃあ映司くんは私以外の女の子、興味ないんだ」
「もちろん。当たり前じゃない」
「なら映司くんはいつも私でえっちなこと考えてるんだ」

彼の身体が固まる。

「…図星？」
「なっ、違うよ！」
「違うなら違うで、ちょっとショックかも」
「うっ……」
困ったような顔をする映司くん。やっぱり彼は優しい。そんな彼だから、ときどき少し意地悪をしたくなる。

「色気とかないもんね、私」
「そんなことないよ！」
「じゃあやっぱり…」
「ねぇ、Aちゃん。この話はもう……」
「…ごめん。もうやめる」

そう言うと、安心したように息を撫で下ろす。

「映司くんが私に言えないようなこと考えてるのはもう分かったからやめる」
「……あーもう！！あるよ！俺だって男なんだから！考えるくらい……！」

観念したように叫ぶ。その顔は真っ赤だ。

「ありがとう。正直に言ってくれて」
「……Aちゃん、どうしてそんなこと訊くの？」
「だって、映司くん前に欲がないって悩んでたでしょ。だから本当にないのかなって。だけど……」

彼に目をやると、思わず口が緩んだ。

「今は欲に塗れてるんだ」
「その言い方はちょっと…」

すると映司くんが自嘲気味に笑う。

「でも、そうかもね」

眉を八の字にして優しく微笑むと、真っ直ぐに私を見つめる。

「君を好きになってから欲深くなった……かな」

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