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彼の愛情(草加雅人) ページ2

「A、おいで」
恋人である草加くんが、手を広げて私を迎える。
言われるままに彼の胸へ飛び込むと、ぎゅっと抱き締められた。まるで壊れ物を扱うように優しく、だけど力強いその腕に、なんだか胸が締め付けられるように切なくなる。
「……あのね、草加くん。一つ訊きたいことがあるんだけど」
おずおずと上目遣いでそう言うと、彼は穏やかな表情を向ける。
「何かな」
「うん……最近ね、職場の男の人たちから避けられてる気がするの。すごく気を遣われてるっていうか」
「……」
「皆今までと違うの。草加くん、何か知らない?」
彼の目を見て尋ねる。
その表情は冷たく、真っ直ぐに私を見下ろしたまま何も言おうとしない。
「……やっぱり、草加くんだったんだ」
「犯人みたいに言うのは止めてくれないか」
沈黙を破った草加くんは、自嘲気味に笑った。
「なんで?何したの?」
「大したことじゃない。ただ、人の恋人にあまり余計なことをしないよう忠告しただけだ」
「忠告って……なんでそんなこと」
「どうして分からないかな」
怒気を含んだ彼の声が、私の言葉を遮った。
「君が大切なんだ……君を守るためだ。それくらい、Aだって分かるだろう」
私の肩を強く掴み、言い聞かせるように言う。その表情はどこか、何かを恐れ怯えているように見えて、言い返すことが出来なかった。
「それは分かるけど……」
何も言えず手持ち無沙汰になった手で、彼のジャケットの裾を掴む。
草加くんは息をつくと、そっと私の頭を撫でた。柔らかく微笑むは草加くんは、いつもの優しい草加くんだった。
「君が心配することは何もない。俺を信じてくれるかな」
諭すようにそう言われると、否定できる訳もなく。
「……うん」
なんだか、結局彼に丸め込まれてしまった気がする。どこか腑に落ちない私の気持ちを感じ取ったのか、草加くんは幼い子どもを宥めるように「君は本当に可愛いな」と言って、頬に優しくキスをする。
恥ずかしさのあまり目をそらす私にお構い無しで、耳、首筋へと更に口付ける。

時折、彼が子どもように見えるのはどうしてだろう。

そんなことを頭の片隅でぼんやりと考えていれば、彼の艶っぽい声が耳元に響いて、いつの間にか何も考えられなくなっていた。

恋人未満(相川始)→←彼の優しさ(相川始)



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mtnz(プロフ) - namelessさん» 感想ありがとうございます!!微妙な関係性、いいですよね……。閲覧感謝です!🙏また新たな良き関係性を書きたいと思います! (4月4日 17時) (レス) id: 2225662d3f (このIDを非表示/違反報告)
nameless - 草加夢の関係性とても好きです……………😭😭😭めちゃくちゃたすかりました…………😭😭😭😭😭😭 (4月4日 3時) (レス) id: 61c846afc2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:mtnz | 作成日時:2024年2月18日 1時

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