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「Aちゃーん」
「……うわ」
「あはー、相変わらず嫌そうな顔すんね。学食行こ？」
この人は私を監視でもしているのだろうか。断る理由がなくなってしまうお弁当を持ってきてない時に限って学食に誘ってくる。
いつのまにか建築棟で見ても驚かなくなってしまった。
嫌な慣れだ。
「最近水曜日もいないじゃん。だったらもうお昼に探し出すしかないもん」
「課題が忙しいの！ずっと実習棟籠ってる…」
「あー最近阿部ちゃんサークル来ないもんな。2人とも真面目なんだねぇ、俺課題あってもサークル行っちゃう」
メディアの忙しさは知らないけどこの人はとにかくサークルが好きなんだなと思う。あの人たちとつるむのが楽しいのだろうか、私からしたら怖い人達でしかないのだけど。
「はい、どーぞ」
「…いや、いいよ。毎回奢ってもらうの悪いし」
「付き合わせてるお礼。てかAちゃんいつもうどんじゃん。もっと他のでもいいんだよ？」
付き合わせてるという自覚はあるらしい。
券売機にお金を入れて選ばせるのはもう恒例になっていた。何回かこうやって学食でご飯を食べていて、佐久間くんと話すのに慣れている自分がちょっとヤダ。
「んー、じゃあカレーとかどうよ。一緒に食べよっか」
「あ、え…まぁいいけど…」
「お願いしまーす」
1番ではないけどうどんよりちょっと高いカレーのボタンを2回押して学食のおばさんに渡した佐久間くん。学食のカレーはいつぶりだろうか。
「あ、その課題？いつ見れるの？」
「え…来月頭締め切りだからその辺じゃないかな」
「そっかー楽しみにしてるね、なんか阿部ちゃんも頑張ってるっぽいし」
多分だけど私達が変な賭けをしていることを佐久間くんは知らない。そしてそれに何故か自分が関わっているなんて思ってもないだろう。苦戦してるのに、厄介な。
「バチバチな2人の戦い楽しみだなー！」
「いや、そんな戦うあれでもないんだって…」
「でもいいね、一生懸命作ったものが形になるのって。時間かけた分達成感も大きいんだろうなぁ。阿部ちゃん頑張ってるからつい応援したくなる」
こんな時間を過ごしてて、何となくこの人は本当に純粋な人なんだろうなって思うようになった。
めげずに私と話そうとするし、ダンスの事も阿部くんを始めとする友達の事も素直に褒めたり好きって言う。ただの陽キャではないんだろうなと。
てか、陽キャの定義ってなんだろう…？
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2021年5月20日 2時
