Epilogue ページ38
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卒業式にはピンクに加えてカラフルな袴の色が加わるのか。そう思ったのは自分もそれを着て桜の並木道を歩いている時だった。
先輩たちの卒業式には特別参加をしたわけでもなかったから、その光景は初めて見るしきっとこれからもないんだろう。
見事に満開の桜。
卒業式の日にもちゃんと大学はピンク色に染まっていた。
「A」
後ろから名前呼ばれて振り向いた。
スーツ姿の彼、やっぱりカメラは肩から下げている。
「めっちゃ可愛いやん」
「…ありがと」
「ふふ、照れてんなぁ?」
「やめてよ、そういうのいい」
いまだにこっそりとフォルダの中に入っている阿部くんからもらった入学式の写真。
その時よりぐんと大人っぽくなって、そして綺麗に笑っている康二くんがいた。
「撮らして?」
「いつも勝手に撮るじゃん」
「なんやーちょっと今日ツンツンしてんなぁ?せっかく可愛いカッコしてんやから笑いなさい」
カメラを構えてシャッターを切る。
画面を見て嬉しそうに笑う。
何回も見たその様子だけど、毎回見惚れてしまうのは何故なんだろうか。
「綺麗やな」
その愛おしそうな目も、何回も見てきた。
「やっぱ桜が似合うな、そんで桜に負けんくらい可愛い」
康二くんはそう言って、カメラを下ろしてポケットの携帯を取り出した。そのまま私にピッタリとくっついて、インカメにした携帯を向ける。
「春ってええなぁ、大好きな子とこんな綺麗な写真撮れるんやから」
あの日、カフェで撮った写真よりも何倍も
楽しそうで、可愛らしい笑顔をした彼が写っていた。
バックには桜、綺麗なピンク色。
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"ふたりコレクション追加!"
その日の夜、また別のピンク色のアイコンに変わっていたあの人から送られてきた写真。
それは自撮りをしている私たちをどこからか押さえたものだった。
"康二もAちゃんも今までで一番いい顔で笑ってるよ"
確かに、私も康二くんも幸せそうに笑っていた。
"そうだ、あの友達が言ってたんだけど"
続けてきたメッセージ、その文面で"あの友達"が"その人”であることなんてすぐに分かって。
"今年の春はすごく幸せだったって"
"でもこれからもっと幸せになる気がするって"
阿部くんも、携帯の前で微笑んでるのが想像できる。
"4年間お疲れ様会、いつしようね?"
彼の周りからは
誰もいなくならない春だった。
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『あの日、残せなかった桜を』
fin.
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スノウ(プロフ) - いえいえ!全然大丈夫ですよ!そうなんですね!教えてくださりありがとうございます! (3月6日 23時) (レス) id: e7424004bc (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - スノウさん» スノウ様。ここをに顔を出さない日が続いておりまして、コメントに気づくのが遅くなってしまいすみません💦非公開作品に関しては再公開等は全て未定です。申し訳ないのですがご了承いただければと思います🙇♀️ (3月3日 21時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
スノウ(プロフ) - このお話には関係ないのですが、見えない世界の恋と魔法ってもう見れないですか?😢💦 (1月23日 0時) (レス) id: e7424004bc (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - takkimakkiさん» takkimakki様。お読みいただきありがとうございました。春はやはり少し寂しい季節でもありますよね、私もいつか素敵な気持ちで春を迎えたいなぁと思います。素敵な日々が過ごせるように願っております。ありがとうございました(^^) (2023年4月16日 18時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - みぃ。さん» みぃ。様。お読みいただきありがとうございました。少しお返しが遅れてしまい、もう早いところは散ってる所もあるみたいですね。いい写真は撮れましたでしょうか?素敵な春になるように願っております(^^)ありがとうございました! (2023年4月16日 18時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽぷら | 作成日時:2023年3月24日 3時