今年は ページ37
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授業中、外の音のうるささに気づき窓の外を見た。
あんなに満開だった桜は気づけばほとんど葉っぱになり、まだかろうじて残っている花もこの雨に打たれて散ってしまいそうだ。
「……最近よく降るね」
「ね、梅雨までまだ1ヶ月以上あるんだけどなぁ」
相変わらずお天気に詳しい隣の阿部くん。
今年はたくさん降るかもねぇなんて同じ外を眺める。
「桜、一瞬だったなぁ」
「お花見できた?」
「え、やったじゃん。ゼミのみんなで」
「違くて、康二と」
そんな事を言われて思わず振り向けば既に阿部くんは前を向いてペンを動かしていた。私たちはほぼ取ってる授業が同じ、露骨に学力の差が出るのはちょっとやだ。
「……ゼミのやつで満足したから」
「えぇ、そうなの」
「それに花粉辛そうだったじゃん。最近やっとマシになってきたみたいだよ」
「雨が降れば花粉も飛ばなくなるからね。確かに最近箱ティッシュ持ってるの見ないや」
別に、彼は変に冷やかしたりはしない。
程よい距離感で見守ってくれていると思う。
それに大学にいる時は今まで通り三人でいることが多いし、そんなに過ごし方が変わった訳でもないのだ。だからこんな改まって康二くんの話をされたのも久しぶりで。
「あのさ」
「うん?」
「阿部くんの友達」
「いっぱいいるけど」
「…春が嫌いだって、言ってた人」
"その人"の事も、話すのは久しぶり。
「その人、今年の春は笑えてた?」
私の方をチラッと見た阿部くん、そして徐に携帯を取り出した。
「そうだなぁ、なんか今年は楽しそうだったかも」
「そっか」
「笑ってるとこよく見た気がする。何があったんだろうね?」
ぱっと私に見せてきた写真。
そこには桜の木の下を歩く阿部くんの姿が写っていた。絶妙な画角で、阿部くんのシルエットと周りの景色がいいバランスでとてもおしゃれ。
「そうだ、アイコンにしようと思って忘れてた。Aちゃんも春仕様にしたら?」
「あれ…私今なんだっけ?」
「雪のまんまだよ。いつか言わなかった?春のアイコンにしようって」
ぽんっと飛んできた通知。
それを開けば彼とのトーク画面に一枚の写真。
「……なにこれ」
「誰かさんから送られてきた。俺の彼女可愛いでしょーって」
いつの間に。
桜を見上げて笑ってる私。
「ピンク色の写真がたくさん来たよ」
そう言う彼のアイコンは、既にさっきの写真に変わっていた。
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スノウ(プロフ) - いえいえ!全然大丈夫ですよ!そうなんですね!教えてくださりありがとうございます! (3月6日 23時) (レス) id: e7424004bc (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - スノウさん» スノウ様。ここをに顔を出さない日が続いておりまして、コメントに気づくのが遅くなってしまいすみません💦非公開作品に関しては再公開等は全て未定です。申し訳ないのですがご了承いただければと思います🙇♀️ (3月3日 21時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
スノウ(プロフ) - このお話には関係ないのですが、見えない世界の恋と魔法ってもう見れないですか?😢💦 (1月23日 0時) (レス) id: e7424004bc (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - takkimakkiさん» takkimakki様。お読みいただきありがとうございました。春はやはり少し寂しい季節でもありますよね、私もいつか素敵な気持ちで春を迎えたいなぁと思います。素敵な日々が過ごせるように願っております。ありがとうございました(^^) (2023年4月16日 18時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - みぃ。さん» みぃ。様。お読みいただきありがとうございました。少しお返しが遅れてしまい、もう早いところは散ってる所もあるみたいですね。いい写真は撮れましたでしょうか?素敵な春になるように願っております(^^)ありがとうございました! (2023年4月16日 18時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽぷら | 作成日時:2023年3月24日 3時