▼兎も立派に噛み付ける 仁兎なずな ページ30
『なずなの家に行くの、何気に初めてだ』
「今日はお詫びだからな〜」
昼休みに一緒に居られなかったから、となずなの部屋にお呼ばれした放課後。彼が自分からそんな事を言い出す事なんて余り無いから、少々珍しい。私が連れて行って欲しいとせがんでも入れてくれた事なんて無いのに。それでも、“今日家来ないか?”なんて可愛い上目遣いと共に言われては、拒否なんて出来ない訳で。
嬉しくって二つ返事で承諾した次第である。
ありがとう、と嬉しそうににっこり笑ったなずなは、やっぱり可愛い。別に顔が可愛いからって付き合った訳じゃ無いけれど。好きになった彼がたまたま凄く可愛くて、凄く私を大切にしてくれる素敵な人だっただけで。もしかしたら、私は可愛いと感じるのは彼だからこそなのかもしれない。
「そこら辺座っていいぞ?」
部屋に通してもらって、座るように促される。…優しいな。きゅん、と胸が鳴るのが分かった。じわじわ顔が赤くなるのには知らんふりをして。すっかり熱くなった顔を仰ぎながら真っ白なベッドに腰を下ろすと、ドアの傍に居るなずなの瞳が見開かれた。かと思えば一瞬で顔を逸らされて。
バタン、と彼が後ろ手に扉を閉めるのを見る。
『なずならしい可愛い部屋だね。』
「そうか?普通の男の部屋だけど」
『壁紙とか机とかベッドとかはそうだけど。 …ほら、あれとか。Ra*bitsの皆の写真でしょ?そういうのちゃんと飾るところとか、可愛いなって』
「…そんなのも、“可愛い”に入るのか?」
いつも通りにっこり笑ってそう言えば、少し狼狽したような、痛いところを突かれたようななずなの声。まるで何か苦いものを噛み締めたかのように、いつも以上に歯切れが悪い。最後の言葉はごにょごにょと音になってなくて聞き取れなかったけれど、…伏せた赤い瞳が一瞬ぎらん、と光った気がした。
何だかなずなの様子が可笑しいけど、それよりも彼の部屋に入れてもらえた嬉しさで、そんな事がどうでも良くなる。だって一気に恋人らしい事をしているような気分になるんだもの。今まで手を繋いだりハグをしたり、キスをしたり。それなりに段階を踏んでは来たのだが、吐くように甘い恋人同士のソレは経験したことが無い。
なずなも私もお互い初めてで、勝手が分からなくて。ただ、恋人と言ったらこういう事をするんだろう、みたいな乏しい理解だけで今までやって来ているのだ。
「(私はもっと触れ合いたい、とか思うんだけどな)」
そんな事を思いながら、彼のベッドに沈みこむ。
そのベッドはなずなの匂いがして、やっぱり胸が跳ねた。
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春永詩帆(プロフ) - 最高です、素晴らしい作品をありがとうございます。 (2021年12月31日 23時) (レス) @page28 id: 46695abdda (このIDを非表示/違反報告)
素敵帽子(プロフ) - 藍原春陽さん» 申し訳ありません!只今修正致しました。不甲斐なくもたった今気付きました……。ご指摘ありがとうございます! (2020年11月28日 23時) (レス) id: 9398c4b575 (このIDを非表示/違反報告)
藍原春陽(プロフ) - 全部の話がきらきらしていてとても好きです。ひとつだけ、本文中で凪砂が凪紗になっていることが気になりました。できれば訂正お願いします。これからも頑張ってください。 (2020年11月28日 0時) (レス) id: b2c9d88620 (このIDを非表示/違反報告)
素敵帽子(プロフ) - のんさん» ありがとうございます!嬉しいです (2020年8月15日 12時) (レス) id: 3919641d26 (このIDを非表示/違反報告)
のん - 応援してます (2020年5月30日 1時) (レス) id: b1f19877ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:素敵帽子 | 作成日時:2019年8月18日 12時