▼花浅葱の表面 瀬名泉 ページ11
別にしてくれなくたって困る訳じゃない｡
それが無いから愛されてないと言い張るつもりも無いけれど､やっぱりしてくれた方が嬉しいじゃない｡
▽△▽
『瀬名ってさ､嫉妬しないよね』
現在､瀬名の家｡テスト期間も近いという事で､お邪魔になっている訳だけれど｡真面目に問題を解く瀬名とは対照に､頭の悪い私は飽きてしまって｡意味の分からない数字と記号が連なった問題を理解するのもそこそこに､常日頃の疑問を今しがたぶつけた次第である｡
｢ちょっとぉ､急に何の話？｣
勉強用だろうか､眼鏡をかけた彼が何事?とでも言うように此方を向いた｡花浅葱の瞳に訝しげに覗き込まれて､思わず腰を引いてしまう｡自分自身､特別な意図があった訳じゃなくて､本当につるりと零れ落ちてしまった疑問であったから､深く掘り下げられると困ってしまう｡何より彼は美形なもんだから､顔が近づくと変に緊張してしまうのだ｡
何だか気になって､と言葉を濁して､慌てて彼から距離をとる｡ただでさえ近い距離に居るのに､これ以上踏み込まれると私の心臓がどうにかなってしまいそうだった｡
曖昧な私の態度が気に入らなかったのか､瀬名はふぅんと呟いてまた問題に戻った｡そんな彼にほっと胸を撫で下ろしながらも､あまり深く聞けなかったことに少し微妙な気持ちになる｡まぁ､それ程彼にとってなんでもない事なんだろう｡きっと私の事を信頼してくれているのだろうけど､全くもって自由が過ぎる｡もっと束縛があってもいいのに､なんて｡一度でもいいから､彼に嫉妬されてみたい､と考える私はどこかおかしいだろうか｡
私が彼以外になびく事なんて絶対に無いけれど､少しくらい感情を剥き出しにしてくれても良いんじゃないだろうか｡本当は嫉妬してくれているんだろうか｡それとも､私が何をしても彼は何の興味も無いんだろうか｡薫に言い寄られても｡千秋に頭を撫でられても｡
勝手にやってろ､と｡貴方はそう思っているの？
あぁ､嫌だ嫌だ｡
ずっとこんな事ばかり考えるから､気持ちがどんどんマイナスになってしまう｡相変わらず問題は解けないし､横にいる瀬名はずっと数式を解いているし｡その綺麗な花浅葱に私は映らなくて､現在それを独り占めしているのは数学の問題｡もやもやと心は晴れなくて､じくりと胸が痛む｡
待て､私が嫉妬してどうするんだ｡
はぁ､と勝手に溜息が零れて､少しだけ泣きそうになった｡
｢ねぇ､あんたさぁ…本当に俺が嫉妬してないとでも思ってんの？｣
『……ぇ､？』
ぐるんと視界が反転して､目の前が花浅葱でいっぱいになった｡
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春永詩帆(プロフ) - 最高です、素晴らしい作品をありがとうございます。 (2021年12月31日 23時) (
レス) @page28 id: 46695abdda (このIDを非表示/違反報告)
素敵帽子(プロフ) - 藍原春陽さん» 申し訳ありません！只今修正致しました。不甲斐なくもたった今気付きました……。ご指摘ありがとうございます！ (2020年11月28日 23時) (レス) id: 9398c4b575 (このIDを非表示/違反報告)
藍原春陽(プロフ) - 全部の話がきらきらしていてとても好きです。ひとつだけ、本文中で凪砂が凪紗になっていることが気になりました。できれば訂正お願いします。これからも頑張ってください。 (2020年11月28日 0時) (レス) id: b2c9d88620 (このIDを非表示/違反報告)
素敵帽子(プロフ) - のんさん» ありがとうございます！嬉しいです (2020年8月15日 12時) (レス) id: 3919641d26 (このIDを非表示/違反報告)
のん - 応援してます (2020年5月30日 1時) (レス) id: b1f19877ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：素敵帽子 | 作成日時：2019年8月18日 12時
