【に！】謎に包まれた歌い手はカフェオーナー

成り行き ページ17

Aside




『この辺の席に適当に座ってて。コーヒー入れてくるから。』


｢あ、うん！｣


まふくんに座るように促し、キッチンへと向かった。


コーヒーを入れながらカウンターからまふくんの様子を伺うと、キョロキョロしていて、なんだか落ち着かないようだ。


『落ち着かない？』


先程入れたコーヒーをテーブルの上に起きながら尋ねる。


｢あ、まあ、うん。オシャレなお店だなあって。｣


『ありがとう。』


私が微笑めば、まふくんも微笑み返してくれた。


『ライブ、急なお願いでごめんね？』


｢ううん！全然気にしないで！｣


ライブの相談にあたって、もうひとつ、伝えなければいけないことがある。


『詳細を決める前にね、もうひとつ大事な話があるんだ。』


｢なに？｣


『僕ね、実は女なんだ。』


｢........へ？｣


『やっぱこれから打ち合わせとかで色々お世話になるだろうしまふくんにも話しておかなきゃなと思ってね、黙っててごめんね？』


｢ちょ、ちょっと待って！まだ頭追いついてないから！｣


まあ、確かに今まで男だと思って接してた人が実は女でしたって言われてすぐに納得できる人は少ないであろう。

しばらく沈黙が続いた。


｢ちなみに、この事知ってるのは........？｣


『くろと浦島坂田船かなあ。』


｢また浦島坂田船だ！ほんとあいつら許さない！｣


なんだなんだ。急にどうした。


｢そもそも僕の方が先にラテと遊んだのになんで浦島坂田船の方が仲良くなってるの！？｣


『うーん........成り行き？』


｢なにそれどんな成り行きなの。｣


あの成り行きは私にも分からなかった。そもそも私の店にお客としてくると思ってなかった。なぜ私の店に来たのか私も知りたい。

なんて考えていると、またまふくんが口を開く。


｢とりあえず、女の子の件は飲み込みました。受け止めました。まあ、ラテはラテだし、この界隈はラテみたいな子多いし大丈夫だよ。｣


その言葉で安心する。やはり先輩からの言葉は偉大だ。


｢ま、それを踏まえた上で、ライブの相談してこっか。｣


『うん、よろしくお願いします。』


さあ、ここからが本題だ。大事な大事なファーストライブ。その上ワンマンライブなのだ。相談とはいえ大抵の事はここで決まっていくだろう。


気持ち切り替えて、色々覚えなきゃ。

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