無色の枷 (ページ17)

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次の日、すっかり日も登ったお昼過ぎ。
Aはハッとしたように飛び起きた。

「寝過ぎた！！今何時！？仕事…………は、そっか。行ける状況じゃないのか…」

思わず普段の習慣から焦りを感じて起きたが、身動きの取れない足枷を見て現実を思い出す。
誘拐されてるのに仕事の寝坊で焦るなんて、本当に社畜なのかも…なんてことを考えつつ、そもそも誘拐されてる状況で昼までグースカ寝る自分もどうなんだ…とAは頭を抱えた。

「はぁ……仕事に行かないならこの際…って、朝までゲームしてた時点で馬鹿だったよな……」

「…あ、おはようA。起きたんだね」

突然、Aの背後から段ボールを持った影汰が現れた。
よく見るとソファの周りにも、いくつかの段ボール箱が置いてある。

「…なにこの大量の段ボール箱」

「届いたんだよ。君が昨日注文した商品のいくつか」

「商品……え！もう！？早くない！？即日配達ってやつ？」

「うん。まだ後日届くやつもあるだろうけどね」

「やったぁ！！……ハッ！というか…」

Aは自身の犯した最大のミスに気付く。
もしや朝これらを届けに、配達員の人が家に来たのでは…と。
もし自分が起きていたら、助けを呼べたはずだ。
完全に逃げるタイミングを逃した…！

頭の中で後悔を繰り返すAを見て何かを察したのか、影汰は彼女に問いかける。

「……もしかして、配達員に助け求めればよかった…とか、考えてる？」

「！！」

Aはブンブンッと強く首を横に振る。

「……」

「……」

「…ま、いいけど。どうせ無駄だし」

「え…？」

「荷物はコンビニ受け取りにしてあるんだ。家(ここ)に誰かが来ることはないよ」

「そ、そうなん…だ……」

「うん…だから無謀な事は考えない方がいいよ。大人しく君は、ここで僕と生涯暮らすと決めた方がいい…」

「……」

思った以上に徹底していて、逃げる隙がないとAは肩を落とす。
いつかのチャンスを待ち望んでいても、これはチャンスすら来ないんじゃないかという絶望感も感じる。

…だが諦めたらそこで本当に終わりだ。
影汰が完全に油断するまで、希望を持って戦い続けなければ。

「……早く僕を好きになればいいのに。…………一生ここにいたいと、思うほどに…」

「……」