365+1の約束▽藤北 ページ6
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まだ少し余韻が残るベッドの中で、お互いの体温を感じながら寄り添い合う。
腕枕にちょこんと頭を乗せている恋人の瞳には、やたらと嬉しそうな俺の顔。
そこにいる俺は、いつもならとっくに夢の世界へ旅立ってるはずの北山が珍しく起きてくれていることが、嬉しくて仕方ないって顔をしていた。
「そういえば、今日は4年に一度の2月29日だね」
「あぁ、そういやそうだったな」
「こ○亀にさ、オリンピックの年にしか起きない人いたよね?いつも両さんが起こしてた」
「あーあれだろ、日暮さん。…つーかお前がそのキャラ知ってるとは思わなかったわ」
「それくらい俺だって知ってるよ!」
「しんちゃんはダメだったのに?」
「両さんはセーフだったの」
ピロートークにしては、ずいぶんと甘さに欠ける話題。
だけど、北山が俺のつまらない話に付き合ってくれるだけで、充分幸せ。
北山が喉の奥で笑うたびに、揺れた髪が俺の二の腕をくすぐって、それと一緒に胸の奥までくすぐられるみたいだ。
そんな風に、懐かしいアニメの話でひとしきり盛り上がった後のこと。
「……あのさ、藤ヶ谷」
ふとした瞬間の、会話の切れ目。
さっきまでとは明らかに雰囲気を変えた北山の声が、俺の耳に届いた。
「どうしたの?」
「…………」
顔を右に傾けると、そばにある大きな瞳は俺の視線と交わることなく宙を彷徨って、時々思いつめたように伏せられる。
その様子は、まだ体の中で燻ってる熱を俺に何とかしてほしい…ってわけではなさそうだ。
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作者名:いちはら | 作成日時:2016年2月10日 0時