【呪術廻戦】 これは、君を想うまでの物語

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ジャゴッと飛び出た鋭角の何本もの触手が貫こうとするのを背後に飛んで回避。無警戒だった吉野からの一撃は避けたとて予想だにしない不意打ちだったようだ。初めて吉野へ向けた言葉が紡がれる。


「ほう。打撃が通用しないとは、面白いね」

「随分余裕ですね。でも知ってますか？油断と余裕は案外似てるんですよ」

「ほら、貴方は僕の攻撃を食らったことにまだ気付いていない」


その発言に目を見開いた時。違和感に気付いた。ゴフッ、喉からこみ上げてきたのは血液。吐血だ。呼吸が荒くなって手足の痺れがやってくる。何故、触手は避けた、どうしてこうなった。混乱と狼狽が自身の心を埋め尽くす。唐突な加茂の異常な反応に伏黒も動揺を隠せない。

あぁ、理解した。この症状は、


「っ、毒…か！！」

「正解です。僕の術式は毒。液体にした毒を式神の澱月を通して微細な霧状に噴霧しました」

「呼吸器官から入り込んだ毒が貴方の身体を蝕んでいることに気付かないで余裕を崩さなかったのは、確かな油断でしたね」

「伏黒君、君はそのまま澱月の中に。巻き添えを食らいたくないでしょ」

「あ、あぁ」







流れるような術式開示。毒の効力は更に強まった。これでは5分も持たないだろう。その間吉野が黙って見ている筈がない。術者には毒の対処法がある。故に空気中に噴霧された毒を吸い込んでも彼には影響はない。えげつねぇな、そう思った伏黒だったが口には出さなかった。偉いぞ。

崩れ落ちそうになる膝を奮い立たせ加茂は構える。汗が噴き出し呼吸も乱れているがそれでも尚。


「(呪力で毒の進行を遅らせることは出来る。だがここまでとはね。侮ったよ)」

「吉野、と言ったかな。君の言葉に否定はできない。確かに油断だっただろう、でもここで終わりじゃない」


血を操るということは形状や運動だけではない。体温、脈拍、赤血球量などの血中成分まで自由自在。”赤鱗躍動(せきりんやくどう)”。スピードもパワーも先程までとは別人。式神使いは中距離が多い。肉弾戦には弱い部類に入る。短期決戦。吉野を気絶させて毒を解除させるのが狙いだ。先程の打撃を受けた伏黒がその技に気付いて叫んだ。


「ドーピングか！！」

「よく気付いた。だが、俗な言い方はやめてほしいね」

「どっちにしても意味は同じじゃないですか」


そうは言ってくれるな。要は心の問題なのだ。オドオドしていた吉野がこんな鋭い切り返しをするとは、成長って怖いね。

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