【呪術廻戦】 これは、君を想うまでの物語

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「玉犬”渾(こん)”！！」


初手を打ったのは伏黒。影絵を形作り、呼び出したのは走攻守揃ったオールラウンダー。ただ、以前の玉犬とは容貌が遙かに異なっていた。二倍にまで大きくなり手は愛らしい肉球など見る影もなく鋭く尖った爪、顔つきも犬というより童話の狼のような勇壮さで。

禪院家相伝、十種影法術。拡張術式の”不知井底”を除いた十種の式神は、完全に(・・・)破壊された場合二度と顕現することはできない。しかし、破壊された式神の遺した術式と力は他の式神に引き継がれる。少年院で没した玉犬”白”は”黒”に繋がれ、そして生まれたのが玉犬”渾”。仲間の意思を継いだこの式神は伏黒の基幹であった。

川の水音を弾けさせ露出した右腕を鋭利な爪で切り裂く。その威力は加茂の”穿血”ですら僅かに欠けさせるだけの肉体に裂傷を負わせるに至った。


「■■■■■■■■■■■■■(速い…。手負いの腕から落とすつもりか)」

「■■■■■■■■■■(術師の少年と少女は森に行った…)」


初めに伏黒と真希が森に飛び込み、身を隠してその場から式神を具現させ襲わせる。そうして次手。背後から呪具を手にした真希が斬りかかった。咄嗟に腕で受け止める、その時花御の目に真希の握る黒刀が映った。







「■■■■■■(少年の剣!!)」


目線が真希に向いている隙に後頭部を”游雲”でぶん殴る。地面に着地した瞬間、手に持つ剣と”游雲”をトレード。そのままバツを描くように同時に攻撃を叩き込む。感じる痛みに思わず花御も悶絶を隠せない。


「二度と三節棍なんて使わせないで下さい！！扱いづらい！！」

「慣れると便利＿＿＿恵！！」


反射的に真希が叫んだ。それもそのはず、伏黒の腹にはナハッと笑い声を上げる植物が生えていた。接近した刹那に埋め込まれたのだろう。口からは血液が噴き出して、不覚を取った事実が目に見える。そんな伏黒に意識を割いた真希の肩を鋭い木が貫く。


「真希さん！！」

「(クソ！！俺がしくったせいだ！！)」

「■■■■■■■■■■■■■■(心臓を狙った一突き…、素晴らしい反応です)」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■(術師というのは殊の外情に厚いのですね。仲間が傷つく度隙が生じる)」

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