一 ページ1
「 ねぇ、君は ? 」
突然の知らない声に肩を跳ねた。
後ろを向いても誰も居ない。
「心臓に悪いなぁ…」
胸元に手を当てて妙に早い脈を深呼吸で落ち着かせる。
「今日が今日だからねぇ」
俺の隣で溜息をつきながら唇に紅を付ける青年。
両耳には湖の流水をそのまま固形にしたような飾りをつけていた。
「こさめちゃんも今の聞こえてた?」
手鏡に映る自分を見ながら薄化粧をしていく。
「聞こえた聞こえた。」
ふてぶてしく唇をとがらせては手鏡をしまうこさめちゃん。
化粧も着付けも終わっている。
「おいお前ら〜、準備終わったなら早く来なよ。」
勢いよく
其方を覗くと前髪だけ桃色に染めた青年が苛ついた様子で立っていた。
「こさめは終わってる、みこちゃん先行ってるね〜」
こさめちゃんが部屋を出る。
入れ違いに桃色の髪の青年が俺の隣に座ってくる。
ちりん、と彼の耳を飾る花札のようなものが揺れる。
「みこと、まだ髪の毛染めてないの?」
「だって…なんで染めるのさらんらん」
らんらんは真っ黄色の俺の髪の毛を弄ってはそう言う。
「そのままだと、六幻様から罰を食らうよ。」
その言葉を聞き、一気に気分が悪くなる。
「俺は、六幻とか信じてないからいいでしょ」
化粧箱をしまい、立ち上がって部屋を出ようとすると彼に腕を掴まれた。
「絶対ダメ、毛先染めるからおいで」
逃げたかったが力の差には勝てない。
大人しく座って彼に俺の真っ黄色の髪の毛先を赤桃色に染められる。
終わるまで絶対に話を聞かないと思っていたが、
彼は何十回も聞いた伝統の話を俺にしてくる。
ただ、その話に耳を傾けるしかなかった。
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