喧騒 ページ6
「だーかーらー！俺は食ってねえって言ってるだろウィル！」
「いーやあの時あの場にいたのはお前だけだ！観念しろナワーブ！」
朝になり食堂へと向かうと真っ先に目に飛び込んできた二人。
私よりも先に来ていた皆は殆どが呆れ顔でその様子を見守っている。
『…何があったんですか』
近くにいたエミリーにそっと耳打ちする。
「…なんてことない、ただの喧嘩よ。"いつもの"ね、」
そう言われると『ああ、』と納得。
ウィリアムとナワーブ。この二人は荘園で最も有名な親友でありライバル関係。
だが荘園で最も喧嘩をしやすい二人組。(内容は大体食事関係)
私は此処に来てまだ日が浅いが、この二人の喧嘩を見るのはもう三回目だ。
周りから教えてもらったのはこの状態の二人に関わらない事。
だから私も静かにしていたのだが、
「…なぁ、Aは俺とウィルどっちが正しいと思う？」
『えっ』
そんなの聞いてない。
「遠慮とかしなくて良いんだぜ！俺だよな！？」
「お前は黙ってろウィル！」
「ちょっと！いい加減仲直りして欲しいの！」
「…え、えっと、僕、か、かえって、良い、ですか、」
母さん元気ですか。私は今、よくわからないゴタゴタに巻き込まれています。
納棺師の彼と同じ気持ちです。帰りたいです。
「いい加減にしないかお前達！！」
その一言に場が一瞬で静まる。
言葉の主…マーサの方を見遣ると表情がまるでハンターの様に恐ろしく変化していた。
「普段通り二人で解決すれば良いだろう！Aを巻き込むのは勿論、周りに迷惑を掛けて…！」
すると二人は先程までの勢いを失い、申し訳無さそうにするとお互いに「…ごめん、」と一礼。
それを見たマーサは普段の微笑みを取り戻す。
「…でも、本当に俺は食ってねえんだよ、お前の肉」
「だったら誰が…」
直後に食堂のドアが開く。
「わ、皆揃ってどうしたの？」
何も知らないトレイシーが目を丸くしつつ入って来る。
「誰かが置いてあった肉を食っちまってな、それで少し_「それってあのお肉の事？」
部屋の空気が凍る。
そんな事をしらないトレイシーはペラペラと喋り続ける。
「いやー、徹夜で機械弄りしてたらお腹空いちゃってさ。食堂に行ったらお肉が置いてあったら何も考えず食べちゃったんだけど…。…皆どうしたの？」
「……お、
「「「『「お前かーーーーーｯｯｯｯ！！！！！！！！！！！！！！！！」』」」」
その日、廊下には泣きながら正座しているトレイシーがいた。
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