見知らぬ荘園で。【第五人格】 (ページ29)

今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:13,707 hit

もう一つの"ゲーム" ページ29

なす術も無く追い詰められていく感覚が背を這う。

どうにか逃げようにも次々と道を塞がれていく。

王を守る近衛はもう居ない。

『やめ…！』

「これまでかしらね、うふふ…」

そして魔女の手が伸び____

「はい、チェックメイトよ」

盤上の私のキングを人差し指で倒すと、魔女は誇らしげに言い放った。
娘達が「流石です」と騒ぐ。

『そ、そんなぁ……』

「うふふ、だって貴方、チェスが弱いんですもの。つい揶揄いたくなっちゃう」

項垂れる私。クスクス笑う魔女。ついでに横でぱちぱちと拍手をするジョゼフ。
そう、私達がやっていたのはチェスだ。
夢の魔女に「暇だから」という理由で誘われ、今に至る。
何故暇なのかと言えば…

『…私も行きたかったなぁ、タロットモード』

タロットモード。
突然荘園の主が用意したゲームにサバイバーは当然、ハンター達も釘付けになった。
…数名を除いて。

「また君達は出禁か。可哀想に」

「あら、貴方だって出禁じゃないの。少しブラックジャックが出来るからって調子に乗らないで欲しいわね」

「「「「「そーだそーだ」」」」」

そう、彼等の様に特殊な戦い方をするハンター達は出禁にされてしまっているのだ。
それはタロットモードに過ぎず、ダブルハンターモードやブラックジャックモードでも。
今回も出禁を食らってしまった魔女に、めでたく私は拉致されてしまったという訳だ。

『…そういえば何故私は拉致されたんですか？？？？』

訳がわからない。
チェスするんだったら横の伯爵だけで良かったのでは？？？？？？と疑問に思う。

「丁度其処に居たからよ」

『不運にも程がある』

思わず嘆いた。
サバイバー練に帰ってきてまだそれ程経っていないと言うのに。
ふと、横からの視線に気が付く。

「……Aは、私達と遊ぶのきらい？」

『えっ、』

「私達遊ぶの楽しみだったの」

「良いでしょ、？」

「遊ぼ」

「駄目？」

5人から見つめられる。
こんな風に見つめられると良心がバチバチに疼いてしまう。

「ね、お願い？」

魔女からもそんな風に言われ、駄目押しするかの様に5人も真似する。

『…、じゃ、じゃああのもう少し、だけ…』

「…君は甘いなぁ」

『うっ…』

ジョゼフにそう言われるも、これは一人っ子の私には凄く効いてしまう攻撃なのだ。
ダヴィンチでないと聞き取れないであろう5人の声を何とか聞き分け、再びチェスの用意をする。

その様子を見ながら、夢の魔女は楽しげにふふふと笑った。