見知らぬ荘園で。【第五人格】 (ページ27)

今日:2 hit、昨日:4 hit、合計:13,709 hit

再会ページ27

____

ベッドに横になる母親を見つめる、娘が一人。

「…母さん、私、小説家になるのやめて働きに出るよ」

母親は苦しそうに咳をする。だが次の瞬間には微笑み娘に言う。

「貴女は貴女の好きなことを目指しなさい」

そんな母親を見て、娘が泣く。

「ごめんね母さん、」

母親は娘を撫で、心配させない様口を開いた。

「母さんは大丈夫だから、ね？A」

『…』

夢の中の人物である筈の母親は、確かに夢の中の自分では無く、"私"に向かって微笑んだ。

____

「あ、目が覚めた？」

『へ、』

あれ、すっごいデジャヴ感。
目を開けるとそこにはマイク。と元気そうなエマとマルガレータ。
私が意識を取り戻すと同時に手を取り合って喜ぶ二人。
やっぱりすごいデジャヴ感。

聞けば私はゲームから帰って来るなりソファに崩れる様に倒れ、そのまま熟睡してしまったらしい。
ナワーブが大声で私の名前を呼んでも、マーサがナワーブを叱っても起きなかったとか。

『お…お恥ずかしい所を……』

「ううん気にしないで！エミリー先生が毛布を掛けてくれてたし皆そこまで気にしてない！」

なんだろう、この複雑な感覚。
寝起きという事もあるが、起き上がってぼうっとしているとエマに強く手を引かれる。

「もう身体は大丈夫？なら一緒に来て欲しいの！」

『えっあっ大丈夫だけども、！？なんで！？』

「「まあまあ、」」

くすくすと笑う二人に背を押され、( 渋々 )エマについて行く。
ついて行くとそこは大広間。
エマが元気良く扉を開ける。

「皆ーっ！Aが帰って来たの！」

『えっちょっ、エマ！？』

大広間で休憩中だった皆が此方を向く。

「( ほら、A！ )」

『( えーっ、… )』

マルガレータに耳打ちをされ、少し恥ずかしくなりながらも口を開く。

『…た、ただいま…？』

少しの沈黙。
そしてエミリーが此方を見て微笑む。

「おかえりなさい」

その一言をきっかけに、辺りからまばらであるが「おかえり」と聞こえ始めた。
以前仲良くしてもらっていたトレイシーやフィオナ達などは近寄って抱き締めもしてくれた。
一瞬、ぽかんとしていたものの次第に笑みが溢れ始める。

母さんの事を思い出し、私だけ幸せで良いのかと思った。

今の私を知ったら、母さんは私を恨むだろうか。

「今ぐらい幸せでも、貴女のお母様は許してくれますよ」

なんてイライの言葉は、この広い(狭い)世界で、私にだけ届いた。