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「柚葉……なの？」
私はそんなに変な顔してない、と文句を言いそうになったが、母の顔を見てやめた。
「……ずいぶん痩せたね。何があったの？」
「柚葉のせいじゃない」
は？と私は言ってしまった。
「もう、結構前……そうね、柚葉が小さい頃。お父さんと別れて……いや、別れたと言っても死別なのだけど。それは柚葉にも話してあったわよね」
比呂美や修平の言っていた通り、確かに母は精神を病んでいそうだった。しかも、結構前から。
……いつから？
そうだ、父と死別してから、母は私に厳しくなった。
それは、言ってみるなら愛の裏返しとでもいうのか。
「お父さんに頼り切りで、どうしたらいいのかわからなかったの。柚葉までいなくなってしまうのではないかと不安で。でもその結果、柚葉は一人暮らしを始めて……」
それで、つい厳しく、と母は言った。
「……それなら、のんで帰ってくる度にいちいち文句をつけてたの？ それは流石にお父さんとは関係ないでしょ？」
「私がしっかりしていなければいけないと思ったのよ」
比呂美と修平は、外で待機していた。
万が一、柚葉に何かあったら追いかけて留まるように説得するつもりで。
しかし、どうやらその心配は無さそうだ。
比呂美は修平を見つめて、
「柚葉のお母さん、今日は調子いいのかもね」
「……そうだな。前ならとっくに柚葉が飛び出てるはずだ」
去年も一昨年もそうだったからな、と修平は呟く。
「……比呂美、お前が柚葉を気にかけるのは、昔助けてやれなかったからか？」
「それ、修平君が言う？ ……でも、そうね」
過去の精算じゃないけど、そのつもりよ、と比呂美は言った。
「まぁ、何つーか、俺らも普通に挨拶していくか。実は俺たちも毎年挨拶してるって言うの、忘れてた……」
柚葉ならそれくらい気づくよ、と比呂美は笑った。
「こんにちはー、比呂美です」
「俺も来ましたよ。あ、柚葉おかえり」
みんながいる年末は何だか特別に思えた。
ありがとう、二人とも。
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