【四十六】 ページ47
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「まだ5歳だと聞いていたけれど。
君はもう十分強いな……五条伯爵は、素晴らしい跡継ぎを育てられた」
「本当にそう思う？悪魔ってうそつきなんでしょう？」
「基本的にはね。けど、今言ったのは本当だし、君のおかげで嘘つきにならずに済んだ」
「……？」
「君が俺と契約するなんて言い出したら、今さっき一筋だと誓って置いてきた女の子に嘘を吐いたことになってしまうからね」
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どういうことだろう、とちょっとだけ思ったけれど
そのまま、悪魔はぼくに背を向けて飛び去ろうとしたから
今浮かんだ疑問は引っ込めて。慌てて、その後ろ姿に知りたかったことを尋ねてみた。
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「父上は、どこに行ったか知ってる？」
「……空の上だよ、勿論ね」
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少しだけ振り返って、ぼくに優しく笑みをみせた悪魔は今度こそ、飛んでいってしまった。
あれが、悪魔？………絵本の中の存在とは、ずいぶん違ってた。
全然、嫌な感じがしなかった。それに
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そっか。ちゃんと、天国にいるんだ。
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ぼくはまた、じっと空を見つめてた。ちょうど朝日が昇り始めて、空が明るくなっていく。
そのとき、ふいに視界が滲みだして。いけない、と思った時にはもう堪えようがなくて
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父上が亡くなって、初めて。目から涙がこぼれた。
泣かないって決めてたのに。泣いちゃいけないのに。だってぼくは伯爵家の跡継ぎだ。
慌てて拭おうとしたとき
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“ちゃんと泣いておくんだ。父君が、心配なさる”
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そんな声と共に、ぼくの足元に黒い羽が一枚、落ちてきた。
悪魔は、ぼくが知っていたよりずっと、おせっかいなやつだ。
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ぼくが声を上げて泣いていると「ぼうや？」と
いつのまにか部屋の入口に、少し痩せてしまった母上が立っていて
ぼくは、そのまま走って母上に抱き着いていた。
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そんなぼくを、ぎゅっと母上は抱きしめ返してくれて
大丈夫、大丈夫と。ぼくにも、自分にも言い聞かせるみたいに
なかなか泣き止まないぼくの背中を、優しく優しく擦ってくれていた。
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抱き合うぼくたちを照らすみたいに窓からは明るい光が差し込んで
光が当たった羽は灰となって消えてしまったけれど
ぼくがそのことに気付いたのは、もう少し後のことだ………。
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「それは夜明けの前触れに」 end
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なるちゃん(プロフ) - うーむ、未だかつて読んだことのない味わい、、、さすがの一言 (2017年7月26日 22時) (
レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)
玉梓(プロフ) - chu-chu***さん» 青い鳥サイトのせいかあまり久しぶりな感じもしないですね（笑）とはいえこちらではお久しぶりです。なかなか鋭いコメントです。椿、気になりますよね。大和田も何をしてくれてるんだという気がしないでもないですが。住人が3人になった紅玉館の行方に御注目ください。 (2015年8月11日 9時) (レス) id: 39f84c63ac (このIDを非表示/違反報告)
chu-chu***(プロフ) - お久しぶりです玉梓さん｡そして第1章お疲れ様です｡序盤はミツコとJのやり取りにニヤニヤクスクスしましたが椿登場があってはそうもいかなくなりそうですね…｡椿が今後どんな働きをするのか楽しみです!無理せず頑張ってください＊ (2015年8月11日 9時) (レス) id: 5adc94e614 (このIDを非表示/違反報告)
玉梓(プロフ) - ムーナカさん» 温かいコメントありがとうございます。そうですね、立ち位置的には今回のお話は序章といってもよいお話だったかと思います。引き続き面白いと言っていただけるような作品になるよう、頑張りますね。よろしくお願いします。 (2015年8月11日 9時) (レス) id: 39f84c63ac (このIDを非表示/違反報告)
玉梓(プロフ) - 愁(ｼｭｳ)さん» お久しぶりです。コメントありがとうございます、嬉しかったので返信もしちゃいます（笑）特殊な設定の多いお話なので作者だけが先走りして「玉梓オンリーワールド」になってしまわないよう気を付けながら、引き続き頑張ります。よろしくお願いします(^^) (2015年8月11日 9時) (レス) id: 39f84c63ac (このIDを非表示/違反報告)
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