いつものあなた 2 ページ17
「自分がちっさくみえてつらいです……」
「おおーそら増田貴久くんと比べちゃうとどうもねあなたそりゃねんふふ」
笑いながら人のあたまバシバシ叩いてかいぐりかいぐりして、よーしよしえらいぞよくわかってるなーなんてまるでワンコに言うみたいに言いながら、ニヤニヤしている増田くん。
……あ、いつもの増田くんだ。
舞台の上、あんなにたくさんの人に拍手されて求められて愛を与えていた人、じゃなく。
いつもの、ますだくん。
「……うそです。恋人がそんなすてきだったら困るなーって話でした」
「いやいやいまさらね、はい、いいのよそんなウソ言わなくてもわかるわかる。貴久くんすてきーっ! ふりむいてーー!!!」
めっちゃ目が輝いてる。両腕バタバタさせて顔振って、すきすきだいすきますだくーん!とか言ってる。
あ、うん、普段の増田くんだな。
「そんな恋人欲しいなーって話でした! おしまいっ」
「もうAったらーーー」
にやにやしながらほっぺをつんつん、て指でつついて、それからちょっとだけ真顔になる。
優しい目元、くすって笑ってから。
「NEWSの増田貴久はいつも素敵なの。命かけてるの。それはもうすごい男なんだよ。誰も追いつかせない。……でもAの隣にいる増田貴久は、ちょっとぬけてるから。気を抜いてるしそんなオシャレしないし素敵なデートもできない。お前だけの、オレなんだよ」
そんなこと言うの、あんまりめずらしいから。
口ぽかんてあけて増田くんの顔を見つめたら、ぶははって、大声で笑う。
「お前いまちょーーーーっとブサイクな顔してますけどぉー?」
「……ひどい、落とすのと上げるの同時にしないで!!」
「ウソは言わない素敵な恋人だよ!」
「そんなのちがうもん」
「じゃあ最低の恋人?」
「いや、そこまでは言ってない」
「最高でも最低でも」
ずっとそばにいてよ。
ちいさくそう囁いて、増田くんは、やさしくほほえんだ。
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作者名:由乃 | 作成日時:2020年10月27日 11時