先生、後輩が生意気です。【黒バス】

38　おは朝、最強説 ページ39

赤司は手のひらをあたしの額にあてたまま見つめてくる。
この状況なんか色々と気まずすぎるから今すぐ帰りたい。




　「お前、昨日あまり寝てないだろう？」


　『……何で分かった！？今日化粧でごまかしてきたのに！！』


　「だと思ったよ、いつもはもう少しブスだからな。化粧したところでブスはブスだが」


　『死ねよ、顔だけ性格ブサイク野郎』


　「顔ブス性格ブスのお前にだけは言われたくない」




あれ？
あたしいいところ無くない？知ってた。

そう、昨日はベッドに入るもほとんど眠れなかった。
主に愛結と小太郎と、時々花宮のおかげで。





　「何かあったのか？」





あたしは相変わらず優しい目をしたままの赤司から視線をずらした。


あたしはたぶん、人生で一度も"恋"というものを経験したことがない。

愛結だけに限らず周りの子達はみんな、誰かを好きになって、悩んで、泣いて、喜んで、そんな青春をしているというのに、

自分は誰かに対して"好きだ"という感情すら持てない。


そうやって虹村のことも、傷つけた。


高校生活も残りわずかだというのに、一生、恋ができない気がしてるなんて。
そんなことで不安になっただなんて。
この後輩に告げれば腹を抱えて笑われるだろうな。





　『別に、なんもないよ』


　「お前、図太そうだもんな」


　『うっせ！』


　「まあしかし、図太そうなのは"見た目"の話だ。本当は繊細で、強がりで、すぐ一人で溜め込んでしまうのも知ってる。これでも俺は心配してるんだよ？A、」





赤司はあたしの髪をくしゃりと撫でて「帰ろうか」とベッドから立ち上がった。

あたしは赤司の言葉に固まり、ほとんど息をしないまま、顔に熱を集めた。

いつもと違う優しいその一面に、涙が出そうになる。

本当、どこまでもこの後輩は調子狂わせてくるな……。






　『赤司、』


　「……？」


　『これ、あげる』


　「………お前…本気だったのか…」


　『お返しはゴディバでよろしく』


　「あまり図に乗るなよ。だが、有り難く受け取っておこう」






赤司はあたしの手から５円チョコを受け取ると、それにキスを落とした。









　「お前が初めて俺にくれたモノだ。大事にするよ」









"赤司くんて、好きな人からしか直接受け取らないんだって"








あたしにも、いつか人生をかけるくらいの"恋"ができるだろうか。

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