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大体の不満を言い終えると、ヴィルはまた深くため息をついた。しかし苛立ちはだいぶ緩和されたようで、先程より纏う雰囲気が柔らかくなった。
「ヴィル、プレゼントをあげる」
オズヴァルトはその様子を見計らってから、一度地下に降りていくつかの箱を持ち一階に戻ってくる。こっちに来てと暖炉前のソファーに手招きしてから、コーヒーテーブルの上にその箱達を並べた。
過去、お土産などで貰って可愛かった箱を保管して再利用する癖のあるオズヴァルトは、今回並べた箱のどれもが過去お土産の包装として貰った箱だった。
「なぁに？ コレ」
「どれがいい？ 選んでいいよ」
並べたのは赤、青、緑、黄色、黒、紫の箱だった。ヴィルは訝しがったが、やがて紫の箱を指さす。
「開けてみて」
ヴィルは言われるがまま、箱を手に取り蓋を開いた。そして僅かに面食らったように眉を上げて、中身を手に取る。
「これ……バスボム、よね？」
「そー。前テンション高かった時に作ったの。あげる。今日も世界で一番美しいヴィルに、お疲れ様のラブコール」
冗談めかして笑ったオズヴァルトは、箱の淵をつぅっと指でなぞる。箱の中身はヴィルの見立て通りバスボムだった。紫色の食紅で色のつけられたそれは薔薇の形で形成されており、見た目からして華やかである。実に六回分の入浴に使えるバスボムは、オズヴァルト的にも自信作だった。
「紫の薔薇の花言葉はねぇ、“気品”なの。他にも、“誇り”“高貴”“上品”“王座”。どれもヴィルにピッタリだと思わない？」
「驚いた。いつから用意していたの？ これ」
「作ったのは最近のはずだよ。記憶があやふやだからなんとも言えないけれど、古いものではないから、役目をちゃんと果たしてくれると思う。いつかヴィルにプレゼントしようと思ってた備蓄」
「他の箱も全部？」
「うん。ヴィルのプレゼント用。中身は開封の時まで秘密」
「あら、今日はくれないの？」
ヴィルがクスリと笑いながら、冗談めかして返した。オズヴァルトは彼にソッと身を寄せて、「楽しみは取っておいた方が日々に潤いが出るでしょ？」と囁く。ヴィルはますますクスクスと笑い、「そうね」と囁き返した。
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作者名：らっこ | 作成日時：2023年1月10日 20時
