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〔今日はどんなことをしたの？ 聴かせて、オズ〕
「面白味の無いことだよ。ビーストを狩って、怪我をして、目覚めたら病床に居た」
〔怪我をしたの？ 大丈夫？ 身体が痛むの？〕
「心配しないでティシア。そこまで酷い怪我じゃないから」
心配そうにこちらを伺ってくれるオルタンシアに、気にしないでとオズヴァルトは笑った。漸く、心の底からホッと出来たような気持ちだった。
「——また、ビーストを殺したんだ」
ぽつりと、オズヴァルトは呟いた。オズヴァルトは知っているのだ。だって目の前で見たのだから。何の変哲も無い人間が、ブロットの液体に飲み込まれてビーストに変化する様を。理性を失い獣と成り果てるその姿を目の前で見た事があるから、“ビースト”なんて言葉で区別していたって、
「ねぇ、アタシって地獄に行くと思う？」
オズヴァルトは絵画の中のオルタンシアに触れた。ザラリとしたキャンパスの手触りと、油絵具の固まった感覚が指先に伝わる。
「人を殺したら、地獄に堕ちるって、昔パパが読んでくれた絵本に書いてあったのよ。『“悪い事”をしたら地獄に堕ちる』って。ねぇ、ティシアから見えるアタシって悪い子？ ビーストを殺すのって、ティシアにとって悪い事？ ティシアは、どう思う？」
オズヴァルトは、そう問い掛けた。冷たい空気の満ちたこの家の中に、オズヴァルトの声と秒針がカチカチと走る音だけが響く。絵画の中のオルタンシアは、優しく笑った。
〔いいえ、貴女は悪い子なんかじゃないわ〕
「アタシ、地獄に堕ちない？」
〔もし落とされちゃったなら、私が引っ張り上げてあげる。絶対に、貴女を独りぼっちになんてさせないわ〕
「……嬉しい。ありがとう、ティシア」
オズヴァルトは頬を絵画に寄せた。オルタンシアも、頬を擦り合わせるように絵画の中で身を寄せてくれた。
どれほどそうしていただろう。オズヴァルトは部屋の冷気に耐え兼ねて、暖炉に火を焚べることにした。薪を放り込み、中央に着火剤となる木片を詰めて、そこに擦り着火したマッチを放り投げる。着火剤に移った火は、徐々に薪にも燃え移りやがて煌々と輝く赤い炎となった。
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作者名：らっこ | 作成日時：2023年1月10日 20時
