【ダイヤのA】もし、あのとき……【御幸一也】

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授業中ってこともあって、廊下を歩く音がやけに響く。

少し、熱くなりすぎたかもしれない。
勢いで言ってしまったあの言葉。

『本当に日向のこと考えてんの？』

なんて。俺も人のことを言える立場じゃない。
俺が言ったことで日向になんらかの影響があるかもしれない。

今となってはもうどうにもできない。
後悔をしていないと言ったら嘘になるけど、スッキリとはしていた。
それと同時に、背中から感じる体温と重みに、俺はなんだか泣きそうになった。


気づけば保健室の前に来ていて、中に入ると先生が出迎えてくれた。
俺は、すぐに日向をベッドに寝かせた。

先生によれば、日向は最近体調が悪かったらしい。
休み時間に、よくここに来ていたようだった。

確かに顔色悪かったよな……と横になっている日向を見る。
まだ顔色は悪いけど、横になったからか少しマシになったように見えた。


5分くらいたった。そろそろ授業に戻らないといけない。重い足を動かそうとした俺を先生が呼び止めた。
先生は職員室に連絡をするらしく、戻るまでの間ここで待っててくれと俺に言った。

先生に頼まれたなら仕方が無い。
俺はそれを承諾して、遠慮なく保健室に居座ることにした。
そして、日向の寝ているベッドのそばに椅子を持ってきて座った。


もし、俺が日向を避けずにそばにいたら、気づけていたかもしれない。
日向は倒れずに済んだのかもしれない。


｢ごめんな、日向｣


いや、きっと倒れずに済んだはずだ。
だって俺は…


｢俺、気づいてたんだ。
お前が……日向が体調悪いこと、気づいてたんだよ｣


そう、本当は気づいていた。
日向の体調が悪いことくらい。


それなのに、言えなかった。
いや、言わなかったんだ。


｢大丈夫だって思ったんだ。他の奴がいるし、俺がいなくても日向は楽しそうだし、だから……｣


俺は、嫉妬したんだ。
日向の笑顔を間近で見れるアイツらに。

苛立ちを覚えた。
俺がいなくても変わらない日向に。


｢くだらない理由で日向の体調を悪化させた。結局俺も、他の奴と同じだよな。ごめん、日向。本当に、ごめんな｣


聞こえてるわけないのに、謝りたかった。
これで許されるわけじゃない。それでも、ただ謝りたかった。


｢やっぱり俺、戻るわ。またな｣

そう言って立ち上がった時、何かに手を掴まれた。
この場でそれが出来るのは、1人しかいない。


｢ひな、た……？｣


俺の手を掴んでる日向は、いつもみたいに笑顔だった。

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