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イノシシを逃がした。

永広は再度五条の方を向き、問う。


「貴方は何ていうの」

「俺?名乗るワケねぇだろ。怪しいヤツにホイホイ名前言うとか有り得ないって話」

「なら、私も名前言わなきゃ良かった」

「それ、俺を怪しいヤツって認定してんのかよ」


地味にディスられた事に腹を立てれば、またまた素直に謝る永広。


「まぁいーけどさー。それより、俺ここの山に用あんだよね。道のり知ってんだろ」

「どこへの」

「えーと、ナントカ村」

「ナントカ村の名前は知らない」

「オマエは話の通じない機械の真似でもしてんの?察しろ」



















結局、1番近くにある村、と説明して案内してもらうことになった五条。

永広の後ろを歩く。自分より何十センチも小さい永広だが、恐らく五条と大して歳は変わらないであろう。顔つきで何となくそう感じた。

しかし、そんなことを呑気に考えていられるのも1分ほど。暑いし疲れるしなんなんだこの任務と駄々を捏ね始めた。


「はーやだやだ。何で俺がこんな目に」

「帰る?」

「帰ったら俺の頭に握りこぶし分のたんこぶ出来んだわ」


ジョーダンジョーダン、などと恍ける五条。


「ちなみに、後どんくらい?」

「後30分」

「謀ったな」

「帰る?」

「帰れない」


とにかく会話の成り立たない永広。五条の言うところのジョーダンが全く通じないのである。


「しりとりしようぜ。しりとり」

「リクライニングシート」

「飛ばしすぎじゃね?最初っから。センスえぐいな」

「薙刀」

「うわ、違う違うこれはノーカン」

「“ん”がついた、貴方の負け」

「イラつくなぁコイツ」


ホントやだ。

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作成日時:2021年3月9日 0時

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