取り扱いを誤らなければ ページ9
「ふむ……その喩えなら、私が感じていた先回り感も、やや得心が行くな。」
「先回り感。」
そういえばそうだった。アヴドゥルさんが思い悩んで居たのは『先を知る事に長けたキキは敵なのではないか』という考え。何だか酷く懐かしい。……最近の問題は、そんな程度の事では無くなっている。冗談抜きで、敵かもしれなくなった。敵であれば攻撃しなければならない。でも僕は友達だから、傷付いて欲しくない。
だからあんな選択肢が思い浮かんだ。キキを日本に返す。どちらとも、回避する事が出来る。
「…………もう、どうすればいいんですか。」
「……占うか？」
「そういう問題じゃあないんです。自分で、腹を括ったつもりでいたのに、速攻でその考えを覆して。決断力の弱さ？ 三日坊主？ それらよりも度を超えた、自分の揺らぎっぷりが……もう……どうにもならない……。ここで更に『誰かの与えてくれる』選択肢に縋ったら……。」
「忙しそうだなぁ。」
「他人事みたいに言わないで下さいよ……。アヴドゥルさんだって、きっとまたこうやって悩む事になるんですよ？」
「はは、まぁそうだな。」
これが時間を掛けて休養した人間の本気か。心の余裕なのか。羨ましい様な、妬ましい様な……でも旅に同行出来なかった悔しさの方が勝る様な。
「日本に、帰したいのか。」
「良く良く考えてみれば、悪手なので駄目ですね。離脱を考えさせるのであれば……遅過ぎた。もう、海を一つ超えるだけでエジプトなのに。今更日本に帰しましょう、なんて。」
「敵だったら、これから敵軍に戻ってくれよと言っている様な物だな。日本に帰るフリをして、寧ろ我々の目的地に先回りしているかもしれん。」
「やっぱりそうですよね。」
時間を掛け過ぎた。共に居てくれる事の心強さと、共に居る事の恐怖心の間で、揺れ過ぎた。
「手遅れ……ですよね。」
「毒を食らわば皿まで。私はもう、共に同行して貰う他無いと思う。」
毒。
劇物。
「もう、悩んだって変わらんさ。彼は前のまま、取り扱い注意なままだろう。付き合い方次第の、今までと。」
「……僕がどれだけ悩んでるのか、分かってますか？」
「さぁな。ただ、私が悩んで来なかった様に見えるか？ ベッドの上で出来る事なんて、限られているというのに。」
「………………、」
顔を上げた。
「どうした？」
「……いえ。」
違う、この人ーーーー。
「……さて。ポルナレフ達は何処に行ったのやら。探して来るから花京院、落ち着いたら潮風で冷えない様に風を避けられる場所に向かうんだ。いいな？」
「…………はい。」
違う。
この人、キレている。
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靜藍(プロフ) - 初めまして。この作品のシリーズを読んでみて、とても素晴らしく考えられたお話で感極まり、コメントさせていただきました！ストーリーは勿論、主人公の謎、登場人物の考えとかとても面白く好きです！より理解するため、また一から読み直したいと思います！！ (2020年11月24日 21時) (
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作者名：heavy loss | 作成日時：2018年1月21日 17時
