壁ガン ページ38
「………………。」
「キキ？……承太郎が、どうかしたのか？」
キキは俺と眼があった瞬間に、逸らした。それを決定打に、今の今まで俺は、気を遣われていたと悟った。瞬間、俺は俺を律する事に務め始める。この深海で暴れるのは命取りになる。だが、この怒りをぶつけずには居られなかった。
「キキ、訊いていいか。」
「…………ﾅﾝﾃﾞｺﾞｻﾞｲﾏｽｶ。」
「母親の顔の特徴言ってみろ。」
「」
俺は今回の話をヘヴィだと感じてから、この話は漫画か何かの話だと考える事にした。信じない訳ではなく、真っ向から信じたら俺は、抱えてるモンを吐き出しそうだったからだ。ホル・ホースが虐待の当たりに突っかかったが、普通に聴いていたらあの役は俺もだった。だが俺はそうしなかった。何故なら、もっとキレるべき人間が、物語に居たからだ。
そしてだから、気が付いた。キキにはまだ悪癖があったのだと。
話を一瞬他に振ってから元に戻し。『俺は一つの話をしています』とでも言わんばかりに話題の方向性は一貫しているようなアピールをしてから、自然な形で、しかし大きく話を逸らした今の状況も、それを物語っていた。
「……承太郎？ 君、どうしたんだい？」
「顔。似顔絵を描くのでもいい。」
「え、このタイミングで？ 何で？」
「描けるだろ？」
「……ｲﾔﾃﾞｽ。」
「「「え？」」」
「…………あっ、まさか母親の顔が描かないと過去捏造の可能性が発生すんの？ 何それ無理ゲー。」
「絵は得意だろう？」
「……得意だけど描きたくねぇ。えーと、特徴？は、一応顔は俺と似てるらしい。俺の顔で我慢してくれや。」
言葉が足りてない？ いや違う。ここまで完璧に出来上がっているとなると失笑したくなる。二つの意味で。俺はキキ迫った。これも二つの意味で。肉体的に。精神的に。
「お前、誤解されるだけじゃなくて、誤解させるのも上手いんだな。」
「あの。躙り寄んないで、狭いって、」
「それが天然モノで、お前なんだとしたら……悪人善人どうこうの話じゃあねぇよ。魔性だ。」
「……？ 何の話を……、してるんだい？ キキ？ 承太郎？」
「でもお前は違う。頭がキレる。だから思想犯だと俺は思ってる。大したモンだ。だがな、それで全員騙くらかせると思うな。」
「あー、えっと、お、…………俺、またキレさせてる、ん、だよな？」
ガンっ！「ひぎャ、ごめっ、ゴメンゴメン！」
後退りするキキの背後には、もう壁しか無い。まだ惚ける気か、と俺は顔面に拳を叩き込むつもりで、隣の壁を殴ると漸く謝罪の言葉が出た。
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靜藍(プロフ) - 初めまして。この作品のシリーズを読んでみて、とても素晴らしく考えられたお話で感極まり、コメントさせていただきました！ストーリーは勿論、主人公の謎、登場人物の考えとかとても面白く好きです！より理解するため、また一から読み直したいと思います！！ (2020年11月24日 21時) (
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作者名：heavy loss | 作成日時：2018年1月21日 17時
