さようなら ページ4
珠紀ちゃんが、ばば様を止めようとしている。しかし、もう無駄だ。現に私の体から、鬼斬丸を封印する為のありとあらゆる力を吸い取られる感覚と削られていく命を感じる。ああ、思ったより苦しくないんだな、ただ身体がとてもアツイ。ふと手を見れば、粒子となっていく自身の身体が目に入った。それを見るなり守護者や珠紀達は目を大きく見開いて静かに眺めた。私の諦めたような表情を見て察したのだろう、そしてまた静かに涙を流し始めた。
｢ねえ、みんな。私ね、今まで将来玉依姫を守って、そして死ぬだけの人生が決まっていて、すっごくしょうもない命なんだなって、物心ついた時から思ってたの。きっと、みんなも思ってたんじゃないかな？真弘先輩も、私とおんなじもしもの時は生贄として鬼斬丸を封印する為だけに生かされていたんだもん。でもね、今思い出を振り返ってみて、あ。これって走馬灯って言うのかな？はは、案外悪くない人生だなあ、って思ったよ。私、みんなと会えてよかった。私の守る玉依姫が珠紀ちゃんで良かった。みんな、大好きだよ！｣
もう身体の殆どは透けてきている。守護者のみんなはただ涙を流して私の言葉に耳を傾けている。珠紀ちゃんはしゃくりを上げながらこくこくと必死に相槌を打っている。それを、ばば様はとても哀しそうに憐れみを込めるように眺めていた。
｢私もっ、私達もAちゃんの事が大好きだよっ！！！！｣
｢っへへ、良かったあ。｣
珠紀ちゃんがみんなの気持ちを代弁するかのように大きな声で言った。私は、今まで生きてきた中でとびっきりの笑顔を浮かべる。
｢…さようならみんな。｣
視界はどんどん白く染まっていく。最後に見たのはみんなの涙に濡れた良い笑顔だった。最後に見れたのがこんなに嬉しい物で良かったと、思う。私は愛されていたんだな、なんて自惚れかな。いいや、違う、私は愛されていたんだ。身体が軽い、意識ももう…掠れて来てるや。みんな、本当にありがとう今まで幸せだった。この言葉が届けばいいなあ。
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作者名：しろくま | 作者ホームページ：
作成日時：2017年11月9日 7時
