恋を拗らせて花吐き病になりました【宮侑】

＊ ページ7

.


＊＊






「はぁ…」


ため息をつきながら自室のベッドへと腰掛ける。






あの後、あたしは由梨に帰ることを伝え、急いで病院へと向かった。



医師に症状を説明すると、やはり、花吐き病という診断を受けた。正式名称では「嘔吐中枢花被性疾患」というらしい。





そして診察時に医師から、

『花吐き病は、恋心を拗らせるとなる病気です。心あたりはありますか？』

と尋ねられた。






思い当たる人なんて一人しかいない。


頭の中に、金髪で、カッコよくて、楽しそうにバレーをしている彼の姿が浮かぶ。








だが、認めたくない、



認めたら終わりだ。






しかし、花吐き病になってしまった以上認めざるえない。








あたしは、



「…侑くんが好き」







認めたくなかった。






再びため息をつきながら、両手で顔を覆う。






嫌だった。好きになりたくなかった。ただのファンとしての好きでありたかった。




あたしがどんなに頑張ったって、彼の目にあたしが映ることなんてない。想うだけ辛いのが目に見えている。




だから今までずっと、「好きじゃない」と否定することで自分に言い聞かせて、気持ちを抑えてきたのに。




そうやって想いを拗らせた結果、逆に仇となって花吐き病になってしまうなんて、







「……馬鹿みたいやん」





あんなにカッコいい侑くんに対してあたしはなんだ。勝手に好きになって勝手に病気にまでなって、


情けない、カッコ悪い。









医師曰く、花吐き病はとても珍しい病気のため世界でも症例報告は少なく、不明な点が多いらしい。


わかっているのは、その人の気持ちを代弁した花言葉の花を吐くということ、感染力が強く他人が花に触れると感染してしまうこと。



治療法は現在でも見つかっていないらしい。そのため治療薬もなく、吐き気止めをだすことしかできないと言われた。







そのため花吐き病を治す手段は二つ。


恋愛を成就させるか、
相手への想いを完全に無くすか。









だったらあたしの選択肢は一つ。





相手への想いを完全に無くすこと。







両思いになんてなれるわけがないのだから。







.

しだれ桜→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す