純白の月 (ページ12)

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「そして、不死鳥の羽根だが……」

そこでオリバンダーは一言区切った。

「ムーンライトさん。わしは自分の売った杖はすべて覚えておる。あなたの杖に入っている不死鳥の羽根、その羽根の持ち主の兄弟から取られた羽を使っている杖が他にあるのじゃ。その兄弟の不死鳥が尾羽根を二枚提供した……たった二枚だけじゃが。あなたがこの杖を持つ運命にあったとは、不思議なことじゃ。その二枚のうちの一枚が……兄弟の不死鳥の羽根が……あなたをひとりにさせたというのに……」

ヒュッ、と息をのむ音がした。ルナの後ろで、マルフォイ一家が怯えたように固まっていた。

「さよう。34センチのイチイの木じゃった。こういうことが起こるとは、不思議なものじゃ。杖は持ち主の魔女を選ぶ。そいういうことじゃ。……ムーンライトさん、あなたには何か大きく大切な出来事が次々と降りかかるに違いない……。『名前を言ってはいけないあの人』もある意味では、そうだったのかもしれぬ」

ルナはオリバンダーに代金を払い、杖の店を出た。その後もダイアゴン横丁でたくさんの買い物をしたが、ルナはずっと考えていた。

『名前を言ってはいけないあの人』――史上最悪の魔法使い、ヴォルデモート。

ヴォルデモートは、ムーンライト家をあの年のハロウィーンの前日に襲った本人だ。その時にルナの両親であるルークとシャインは殺された。

ルナは何らかの力によって、呪いを避け、生き残ったと聞かされている。詳しいところは、よくわかってはいないのだが。リルはその時、ルークの指示で隠れて情報を味方に知らせていたという。

ヴォルデモートは、翌日のハロウィーンの日に、ゴドリックの谷ポッター家を襲い、ルナと同い年である男の子、ハリー・ポッターに呪いを跳ね返され消滅した。

ルナは呪いを避け、ハリー・ポッターは呪いを跳ね返した。ルナとハリー・ポッターは“生き残った子”とされている。

だが、ルナにとっては、ヴォルデモートを消滅させたのはハリー・ポッターであり、彼の方が“生き残った子”にふさわしいと考えているのだ。

そんなヴォルデモート――両親の憎き仇――の杖に使われている不死鳥の羽根と、自分の杖に使われている不死鳥の羽根は、持ち主が兄弟の不死鳥であるとは。ルナは何とも言えない気持ちだった。

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