第27話「彼女の二つの道」 ページ29
花弁のような色をした髪に触れていると,少女はふと思い出したようにクスリと笑った。
「私は貴方の方が綺麗やと思うな」
「?……はぁ?」
「綺麗な夕焼け色。私は好きだよ」
“好き”
その言葉に全身が硬直し,ぶわりと熱を持った。
勘違いするな。彼女が云っているのは自分の髪の事だ。断じて自身の事でない。
「では私はもう行きますね。たこ焼きご馳走様でした」
「お、おう」
ふわりと立ち上がった少女は唐突に別れを告げた。
先程まで触れていた置き去りになっていると,少女が此方を振り返った。
「ねえ、御名前を伺っても?」
「……中原中也だ。手前は?」
すると彼女は嬉しそうに微笑んで云った。
風が彼女の赤髪と白い襟巻を巻き上げていた。
「花柳蓮華。以後お見知り置きを」
蓮華と名乗った少女はそのまま立ち去って行った。
その様子を見えなくなるまで見送ると、中也も立ち上がって歩き出した。
「花柳蓮華、か………」
***
「おお、めっちゃ綺麗」
潮風の匂いに誘われて、海の見える公園に辿り着く。
その美しい蒼に彼女は目を奪われていた。
『そういえば中原さんの瞳とおんなじ色やなぁ』
澄み切っていて真っ直ぐな蒼。夕焼け色の髪。
何となくだが親近感のようなものを感じた。
『彼もいい匂いしたな……』
頭を撫でられた時にふと漂ってきた甘い匂い。
若干煙草と香水の匂いもしたのでほろ苦いチョコレートのようだった。
駄目だ、思い出しただけで頬が緩んでしまう。
「そういや“中原中也”も文豪やったよな……」
公園のベンチに座りながら腕を組む。
読書家だった両親の友人が詩集だから読みやすいと作品を読んだ事があった。
撃たれそうになった時も素手で弾丸を止めていたので、もしかしたら彼も異能力と言うものを持っているかもしれない。
「異能力、武装探偵社…そしてポートマフィアか…」
普通なら有り得ない事だらけの世界だ。
知らない事も沢山あるし、撃たれそうになった以上あの世界よりも危険だと言う事は明白だった。
「これからどうしよう……」
人間として生きるか、吸血鬼として生きるか。
それは吸血鬼になってからずっと彼女の中で渦巻いている疑問だった。
「………ねむ……」
ぼうっと物思いにふけっている内に蓮華はそのまま眠ってしまった。
第28話「美しい化け物は何を望む」→←第26話「気に入っちまったからなぁ」
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星木雪野(プロフ) - ありがとうございます!気に入って貰えて嬉しいです!これからもよろしくお願いします! (2019年7月31日 21時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
赤砂晋助(プロフ) - この話好きやけんこれからも頑張ってください! (2019年7月22日 9時) (レス) id: 5ddd851753 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - 三輪さん» 実はそうなんです!バリバリの関西弁ではないのですが、気に入って貰えて何よりです!これからもよろしくお願いします! (2019年6月24日 15時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
三輪 - 吸血鬼ネタ最高です……!蓮華ちゃんが可愛い。。それとつかぬ事をお伺いしますが、作者さまは関西圏出身なのですか?方言が刺さります! (2019年6月24日 15時) (レス) id: e6d66e6ea7 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - ありがとうございます!!私も吸血鬼ネタが大好きで作りました!これからもよろしくお願いします! (2019年6月2日 23時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星木雪野 x他1人 | 作成日時:2019年6月2日 17時