第15話「甘くて、魅惑な」 ページ17
「ふーん……吸血鬼、ねえ」
「……」
「一応確認するけど、異能じゃないんだよね？」
「そんなものはありませんよ」
………結局，話してしまった。
刺された事などは話していないが、自分がずっと悩み、苦しんできた元凶をこんなにもあっさりと話してしまうなんて。
よりにもよって、こんな変人に。
「………怖くないんですか」
「ん？」
「普通目の前にいる人間が化け物だって知ったら、怖がったり消そうとするものでしょう」
それが常人の反応の筈だ。
お陰で自分はあの時腹を刺されたのだから。
冷め切った声で云った少女に太宰は笑って答えた。
「異能力なんてものがあるんだ。今更怖れなんてないさ」
「……」
「それにしても吸血鬼なんて初めて見たよ」
「でしょうね。私も未だに同族に出会った事がありませんから」
「親は吸血鬼じゃないのかい？」
「至って普通の人間でした。……私も、幼い頃は普通の人間として暮らしていたんです」
太宰は口元に手を当てて考え込む。
本当に変な人だ。自分は寝込みに血を吸おうとしたのに逆に楽しんでいるようにも見える。
「………とりあえず、私の血を飲むかい？」
「はい？」
「血が足りてないから私の血を吸おうとしたんじゃないの？」
「それは！……ッ」
いきなり立ち上がった所為でふらりと身体が傾く。
倒れる、と思った瞬間彼が受け止めてくれた。
「もう限界に近いんだろう？目が真っ赤だ」
彼が自身の包帯を取り、首筋が露わになる。
甘い匂いがする。心臓が早鐘を打つ。
この男の首に噛み付け，と本能が叫んでいる。
「…ごめんなさい」
瞬間、蓮華は勢いよく首筋に牙を立てた。
「………ッ」
痛みに呻く声が聞こえる。
しかしそれはやがて熱っぽい吐息に変わった。
「………美味しい？」
「……美味しい……理性飛びそう……」
彼の血は今までのどんなものよりも甘くて美味しかった。
頭がくらくらして、何も考えられない。
唇を寄せて吸う勢いを強くすると、彼の腕に力が入った。お互いに抱き合い、相手にしがみ付く。
「ふふ、……顔真っ赤」
「……一々云わなくて良い」
「……ねえ、もう終わり？」
「まだ。止血しますから………」
噛み跡から流れる血を舐めとると彼の身体が強張った。
蓮華は思うままに傷に吸い付く。
「あのさ、ッ擽ったいのだけど………」
「……我慢して、下さい」
そして漸く彼女は唇を離した。
第16話「桜と薔薇とドラム缶」→←第14話「吸血鬼、ボロを出す」
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星木雪野(プロフ) - ありがとうございます！気に入って貰えて嬉しいです！これからもよろしくお願いします！ (2019年7月31日 21時) (
レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
赤砂晋助(プロフ) - この話好きやけんこれからも頑張ってください！ (2019年7月22日 9時) (レス) id: 5ddd851753 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - 三輪さん» 実はそうなんです！バリバリの関西弁ではないのですが、気に入って貰えて何よりです！これからもよろしくお願いします！ (2019年6月24日 15時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
三輪 - 吸血鬼ネタ最高です……!蓮華ちゃんが可愛い。。それとつかぬ事をお伺いしますが、作者さまは関西圏出身なのですか？方言が刺さります！ (2019年6月24日 15時) (レス) id: e6d66e6ea7 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - ありがとうございます！！私も吸血鬼ネタが大好きで作りました！これからもよろしくお願いします！ (2019年6月2日 23時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星木雪野 x他1人 | 作成日時：2019年6月2日 17時
