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リクオは「ふは」と笑い声をあげると、Aの髪を少し整えてあげてから、一言。
リクオ「かわいい」
自身の髪からリクオの手がゆっくりと離れていくのを視界の端に捉えながら、Aは聞いたその言葉にいよいよ震える手を口元に置いて顔を隠す。
A「か、か、かっ……!」
リクオは照れるAに再び面白そうに笑った。
そこに玄関の方からカナの声が響く。
カナ「雲井ちゃん! リクオくん! もう出るって! また置いてかれちゃうよ!」
リクオ「はーい! 今行くよ」
答えながらリクオは廊下を歩き始めた。
一人残ったAは大きく息を吐いて、両頬に手を置く。
髪に触れられた時に触れた肌が熱を持っているようだった。
ーーー距離が、近過ぎる……。
あの距離感は果たして天然だからなのか、それともわざとなのか、Aにはわからない。
未だ動悸が治まらず、Aはリクオの後ろ姿を見た。
リクオ『Aちゃんが望むなら、僕はどこにいても駆けつけるから』
その言葉にAがどれほど舞い上がり嬉しく思ったのか、リクオは知らないだろう。
ーーー私、リクオさんのこと、
Aがそこまで考えた時、突然脳裏に何かが浮かんだ。
リクオ『かわいい』
Aは一瞬にして顔の熱が引くのを感じた。
ーーー何、この既視感。
ーーー前にも同じようなことを、同じように言われた気がする。
ーーーそう、あの人に。
浮かんだのはぬらりひょんと名乗った彼の言葉だった。
そしてAはとてつもない自己嫌悪に苛まれる。
Aはリクオと話している時は、ぬらりひょんの彼のことは全く思い起こさない。
逆もまた然り。ぬらりひょんの彼と話す時には、リクオのことを考える余裕がないのだ。
それはAが無意識のうちに彼らが同一人物であることに気付いていることを意味していた。
しかしAはその答えにたどり着くまでには至らない。
ーーー私、最低ね。
Aは先刻とは裏腹の暗い気持ちでリクオの背中を追うのだった。
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Ren(プロフ) - とても面白いです!!更新頑張ってください! (2018年10月28日 23時) (レス) id: 572a8ca0c0 (このIDを非表示/違反報告)
ちさ(プロフ) - すごく続きが気になります!更新ゆっくりでいいんで頑張ってください!楽しみにしております (2018年7月21日 1時) (レス) id: d31ba2a391 (このIDを非表示/違反報告)
悠与(プロフ) - すごく読みやすくて素敵な作品でした!またお時間があるときに更新していただけると嬉しいです^^ (2018年7月19日 13時) (レス) id: 6d9bae1f6c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:moon | 作成日時:2018年4月29日 22時