2口 ページ2
・
父が屋敷から出て、車に乗ったのを確認すると私は縄を解き、三木先生の家へと足を運んだ。
「せんせー!来たよー!」
「はぁ…またいらしたのですね。今日はどこに行かれるのです?」
「そうねぇ…あ、父は京都に行ったから江戸にでも行きましょうかね!」
先生はくすりと笑うと、「本当に…A様には敵いませんね」と言った。
「出来るだけ援助は致しますね。…あ、私の知り合いに警護を頼みましょうか」と言うと、どこかに電話をし始める。
電話をしている時の先生はどこか強い口調で、私に関わりのあるひとは立場のある人なんだと最確認してしまう。
「…よし。ただいま江戸にある警察庁の長官にお電話をさせて頂きました。黒いスーツに身を包んだ方です。刀を持ってるのですぐにわかりますよ」
「おぉ…!何から何までありがとう先生!」
そして着物を真新しいものに着替え、私は駅まで歩き始めた。尾張は江戸と距離があった為か、天人の影響を受けておらず生活は廃刀令が出る前のようだ。
唯一受けた影響と言えば江戸に短時間で行ける駅が出来た事くらい。
なのでまだ刀を腰に差して街を歩いている人が多い。そう、武士の文化がまだ色濃く残っているのだ。
そんな地域の藩主の娘だというだけで人々は私が道を歩くと座り込んで頭を下げる。その空間がどうにも苦手な私はやめてと伝えた。
若い人は比較的やらなくなったが、ご老人はまだ頭を下げる。
もうそれはそれと割り切ったが、それでも少しモヤモヤするものがある。
「…よし、着いた。えっと…江戸行きの列車は…」
「何かお困りでも?」
「あっ…車掌さん。江戸行きの列車は何分発ですか?」
「江戸行きの列車でしたらもう着きます。ホームまで案内致しますね」
車掌さんに着いていくと、そこにはとても立派な列車がホームに止まっていた。一般の人もその立派さに度肝を抜かれたのか口を開けて動かない。
「あの…この列車は」と、私は思わず声をかけていた。すると車掌さんは「A様が当駅を利用されるということで、尾張駅最高級の列車をご用意させて頂きました」と頭を下げた。
「…あ、これは…すごいですね、ありがとうございます」
「なんと…身に余るお言葉です」
あれやこれやと流され、いつの間にか列車は出発していた。
流れる景色を車内の窓から見つめる。
江戸に近づくほど高くなる建物に私はワクワクしていた。
・
68人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミーこ(プロフ) - さちさん» ありがとうございます☺️❤️🔥なにせ私が土方さん推しなものでして笑 (2022年11月6日 19時) (レス) id: 3ecbe7c0be (このIDを非表示/違反報告)
さち - 続きが気になります!土方さんいいですよね。 (2022年10月31日 17時) (レス) @page6 id: 0e3bc286c0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ミーこ | 作成日時:2022年10月10日 19時