煉獄さんはむつかしい

44話 ページ45

あの事件があった時から杏寿郎は私のことを避けるようになった。




話しかけてくれない。話しかけても答えてくれない。



目も合わせてくれない。








…………つらい。



杏寿郎が倒れてから、
私と千寿郎くんは滅茶苦茶頑張って杏寿郎を寝台まで運んだ。


持ち上げるのは不可能だったため床に布団を敷き、そこに杏寿郎を寝かせた。






杏寿郎は5分程ですぐに目を覚ましたけど、
そこから私を無視する運動が開始されました。









…………なんでだよ！！！！


ご飯を杏寿郎に食べさせる今も、全く口をきいてくれない。


無言。ただひたすら無言。
超気まずいんですけど。

いやだってさ、無言であーん、ってしてる空間って何⁉





私が匙を動かす音が部屋に響く。

目も合わせてくんないし。


そりゃちょっとねえ、
裸で抱きついたのは悪いと思いますよ？

ごめんね！でもさ！杏寿郎も抱きしめ返したじゃんか。


小さい頃散々見てただろうし、今更裸で見ちゃったくらいねえ！









…………いやでも私が悪いか。


こうなったのも私がゴキブリ怖かったからだし。




無言で咀嚼を続ける杏寿郎をじーっと見る。

杏寿郎はそれに気づいたのか、更に目を伏せ、黙々とただ食べている。




まあ何にせよ、このままでは良くない。謝ろう。




『あのー…杏寿郎？』
「…。」




はい無視いただきましたー!
もう気にしないもんね！！！




『ごめんね昨日。大声で呼び出した挙げ句抱きついて。ほんとに悪かったと思ってる。』





「………。」


えっ。無視？衝撃なんですけど。









『……もし杏寿郎が私のこと気にしてるんだったら、大丈夫だよ。』



杏寿郎がぴくりと眉を動かす。
　
…………ん？

この反応は。

もしや私が杏寿郎に裸を見られたことを気にしていると思っているのか？






だとしたら…


『私の事なんか心配しないでいいよ！……昨日のことなんか全然気にしてないし！』




そう言い、杏寿郎の方を見ると眉を顰めて私の顔を凝視していた。





あっ！
やっと私の方見てくれ………

「ほう!!気にしていない‼そうか!

君は男に裸を見られるくらい、訳ないと!!!
それはそれは､なんと豪胆なお嬢さんだ！！！

そうか！ではもう知らん!!!」








　えっ………。









超おこじゃね？


　

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