ページ6
洞窟の中はかなり奥まで続いており、いくら歩いても先が見えません。
いくつも分かれ道があり、仁人の鼻と、太智の行灯の灯りを頼りに、血の臭いを追って三人衆は真っ暗な洞窟を進んでおりました。
もうすでに外の雨の音も聞こえません。
その代わり、洞窟全体から、何か空気が流れるような、風が吹き抜けるような、そんな奇怪な音とともに、鈴の音のような、しゃんっという音が時折響いておりました。
舜太「この音何なんだ?この洞窟に入ってからずーっと聞こえるけど」
仁人「さ、さぁ?」
太智「……」
洞窟の奥に入り込んでからというもの、入り口で舜太にあれやこれやと言っていた仁人と太智の口数は、みるみると減っていっておりました。
更には、ちょっとお互いの体が触れ合うだけで、
仁人「ぎゃああ!!」
太智「ひいいい!!」
と、悲鳴を上げるのです。
その様子に舜太はほとほとあきれ返っておりました。
舜太「やっぱ怖いんじゃん!」
仁人「こ、こ、怖くなんぞ、ありませんぞ……。いや、怖い……」
太智「おいらも怖いよぉおおお!!鬼よりももっと違うのが出そうだよぉおお!!」
舜太「うるっさ……。んもー……引き返せよ……」
太智「ひ、引き返すのも怖いよぉおおおお!!」
舜太「じゃあ何でついてきたんだよ!!」
洞窟の壁に反射して、舜太の叫びが幾重にも重なって聞こえます。
まだまだ奥が深そうなこの洞窟。
その先には一体なにが待つのでしょう。
仁人「こ、この奥から、血の臭いが……」
すでに仁人と太智はお互いに腕を掴んで身を寄せ合いながら歩いていました。
鬼と戦うことは平気ですのに、二人ともこういう得体の知れない暗闇は苦手のようです。
そして、仁人が指差す方向を目指して歩いておりますと、ようやく少し開けた場所へたどり着きました。
確かにここからは、舜太や太智でもわかるほど異臭が立ち込めております。
肉が腐ったような、気分の悪い血生臭さと腐敗臭。
臭いの出所はどこかと、舜太が太智から引っ手繰った行灯で辺りを照らしていると、洞窟の地面の上に、とんでもないものが転がっておったのです。
2人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:milkssss | 作成日時:2020年7月13日 21時