M!LKで桃太郎其の弐 (ページ28)

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五条大橋の架かる町から西へ進んだとある森の中。
背には自分の背丈を越す長尺の棒を担ぎ、腰には大剣、岩融を携える一人の男、名を佐野勇斗。
彼はあの町で奪い取った防具や弓、槍、そして、刀の入った風呂敷を背負い、森の中の洞穴に差し掛かりました。
入り口は大きな岩でふさがっており、子供が一人通れるか通れぬかほどの隙間しか開いておりません。
しかし佐野は、その大岩を片手で動かすと、その中へと姿を消していきました。
それからしばらく、その森に、彼の匂いと、彼が奪い取った刀の匂いを追って、舜太、仁人、太智の三人がはせ参じたのです。

舜太「本当にあの洞穴にあいつがいるんだな？」

仁人「間違いありません。奴の匂いと、そして、舜太殿の刀の匂いがこの中から致します」

森の木々に隠れ、三人は不気味に口をあける洞穴を注視しておりました。

太智「よし……。じゃあ、あいつが出てきたらおいらの言ったとおりに頼むよ」

舜太「わかった」

太智「大将、えらく素直だね」

舜太「えっ？う、うるさい！！お、俺は刀を取り返す、ために、し、仕方なく……」

太智「へへ、はいはいわかりましたよっと。おっ……出てきたよ！」

その一言で、三人に緊張が走りました。
武器を持っていても、一瞬の内に蹴散らされた相手と再び相まみえるのは、なかなかの勇気が必要です。
しかも、今は丸腰。
太智の言っていた策で、本当にうまくいくのかもわかりません。
けれども、その洞穴から佐野が現れ、入り口をふさぐように片手で岩を再び押したところで、舜太と太智は彼の前に立ちはだかったのでした。