23話 ページ23
「懐かしいっすね〜」
そう言う鉄虎くんたちの顔が見れなかった。
顔をうずくめて「知らなかった…」としか言えない。好きだと自覚した後、すきなのは私だけでずっと一方通行な思いだと思っていたから…。
「あれくらい走り回ってるくらいなんだから、ちょっとは離れても良かったんじゃないかな。」
「それにしても光って案外手が早いんだな」
「まだ2日目って言ってたっすからね」
「Aさん、このことは天満くんに秘密でお願いしますね。男には多少かっこつけたい生き物なので」
翠くんにそう言われ、私は頷くしかなかった。
その後、改めて3人にお礼を言うと帰り道を歩く。
ここで初めてスマホの電源をいれる。
「もう18時半過ぎか…」
今日の長い長い一日を帰り道を歩きながら振り返る。
衝撃的なことを聞かされ、そして未だに光くんと話せないままだ。
メール確認をしても、電話確認しても光くんからは来ていない。
「どうして…なんだろ…」
電話かけてみようか、メールしてみようか。道の真ん中で立ち止まっては進み「うーん…」とつぶやく。
明日、会ってみたら話せばいいのかな…。
いつの間にか私は家の前についていた。
「A…!!」
「え?光くん…??」
家の前には光くんが座り込んでいた。
「な、なんで…」
「さっき友ちゃんから電話かかってきたんだぜ…。俺、Aのこと傷つけちゃったんだぜ…」
「光くん…」
今すぐにでも泣きそうな顔で光くんは下をうつむいている。そんな光くんに、私は何か考えるより前に抱きしめていた。
「…大丈夫だよ。」
「でも、膝、怪我してるんだぜ…」
「大丈夫だよ。そのうち治るから」
「でも、泣いてたって…友ちゃん言ってたんだぜ…」
「大丈夫だよ、光くんに会えて、やっと話せたんだもの…。こっちこそごめんね…」
私がそう言うと、光くんは私とパンを分け合わなかった理由を教えてくれた。
とても恥ずかしそうに。
光くんがまた逃げ出さないようにしっかりと光くんの右手を握る。
「オレが、Aの為に選んだから、Aに全部食べて欲しかったんだぜ…」
「光くん…、察せなくてごめんね。ありがとう。ぐちゃぐちゃになっちゃったっけど」
「また、たくさんあげるんだぜ!!Aが笑顔になるなら毎日毎日Aの大好きなパンをあげるんだぜ…!!」
と言う光くんの笑顔はとてもキラキラしていた。
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あいらいす(プロフ) - コメント失礼します!わたしはみつる推しなのですが、なかなかメインのモノがなく…こちらやっと見つけて読ませていただいたのですがとてもキュンキュンしました(*´-`*)めちゃくちゃ感動してます…!続き楽しみにしてます!頑張ってください☆ (2016年5月7日 23時) (レス) id: 143028f12a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚日 | 作成日時:2016年4月23日 0時