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カタカタ、と不揃いなスピードの無機質なその音を聞いているうちに時間は進んでいて、気づけば時計の針は一番上で重なっている。
意識した途端、腹の虫がひとつ唸ってみせた。
だけれど、どうしても何かを口に入れる気になれなくて、鞄の中から朝早くから作ってくれたのであろう愛妻弁当を開けてもそれは変わらなかった。
上手く形の整った、少し甘めのたまご焼きを箸でつまみ、口に運ぶ。
好みの、ふんわりとした味がそこに広がったがすぐにそれとは違う苦い何かで塗られて、水で流してみる。
流れたのは甘さだけで残ったのは苦い何か。
舌に絡んだように上手く飲み込めず、眉を寄せることしかできない。
その頭の中で過ったのも、やはりアイツだった。
腹の虫と同じように、意識すればするほど俺の中がアイツでいっぱいになった。
そうなればもうおしまいで。
衝動的に、携帯を取りだし随分下にある発信履歴を押してみる。
連絡帳から探さなかったのは、確かに彼が俺の恋人だった頃にかけた電話と重ねていたかったから。
ﾋﾟﾋﾟﾋﾟ、とお決まりの音を急かしながら次の音を待つ。
しかし、俺の待っていた音とは違って聞こえたのは女性の声だった。
知ってる。
これは留守番電話サービスの声。
いつもなら折れたかもしれない。
けれど、俺はただただ、彼に想いを伝えたい一心で何度も彼の声を呼び続けた。
そのうちに、得体の知れない胸騒ぎがしてきていても立ってもいられなくなる。
まるで、傍にいるみたいに。
まるで、すぐそこでチョロ松が俺を呼んでいるみたいに。
そう思えて仕方がなかったんだ。
もし、その声が泣いているのなら。
もし、その声が俺を恋しく思うものなら。
なんて、反吐が出るほど都合のよくて自意識過剰な期待。
俺は、ただその少しの期待を信じたかった。
勝手に裏切られるのなら、それでも構わない。
でも、俺は、幸せでいたかった。
幸せになりたかったんだ。
幸せにしたかった。
それを壊したのは?
紛れもない、それを願った二人。
一緒にいることが運命だったのなら、必ずもう一度。
俺は、アイツを抱き締めることができるはずだ。
背後に聞こえる上司の驚いた声も、周りの静止の声も、俺の耳にはただの雑音でしかなかった。
ただ、愛しい人の声だけが聞きたかった。
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チュロス(プロフ) - 無有(むう)さん» コメント、そしてお気遣い有り難く存じます。自分がなんだか甘えているようで受け入れられないのですがそう仰って頂き光栄に思え、心の支えと致します。ありがとうございます。こんな作者一人にも優しいお言葉をかけて下さる皆様が大好きです、(笑)頑張りますね、 (2017年3月21日 21時) (
レス) id: b4cf024556 (このIDを非表示/違反報告)
無有(むう)(プロフ) - この作品、面白くて本当に大好きです。こんな事言ったら分かるわけねーだろ、って思いますが、お気持ち良く分かります。順調に体調を良くして、更新頑張って下さいね。どこから目線で言ってるのか…((苦笑 でも本当にこの作品が大好きなんです。応援してます。 (2017年3月18日 19時) (レス) id: 5efb7f141d (このIDを非表示/違反報告)
チュロス(プロフ) - 三島さん» コメントありがとうございました、そして返信遅くなってしまい申し訳ないです。とても嬉しいです、ありがとうございます。誰にでもあるのですけれどね、(苦笑)ただ、行動が良からぬ方へしか進まないのは自分に嫌気がさすしかないです。少しずつ頑張っていきますね (2017年3月18日 13時) (レス) id: b4cf024556 (このIDを非表示/違反報告)
三島(プロフ) - お気持ちよくわかります、私も全てがどうでもよくなるくらい辛い時が最近よくあります。 …なんと言えばいいかよく分からずコメントしてしまったのですが、活動一時休止でもいいですし、自分を大切にゆっくりよく休んでください。応援しています!!長文すみません;; (2017年2月26日 20時) (レス) id: b7612e5cff (このIDを非表示/違反報告)
チュロス(プロフ) - うめるばさん» コメントありがとうございます、あらあら…!!どうやら読者様は涙腺のあまり強くない方がたくさんいらっしゃるみたいですね、(苦笑)ごめんなさい…先日から体調を崩しておりまして、また治り次第すぐ再開致します。お待たせしてしまいすみません…ご理解お願いしたいです (2017年2月21日 20時) (レス) id: b4cf024556 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：チュロス | 作成日時：2017年1月15日 7時
