03 ページ3
「...アンタ、Aって言ったな
俺のことも苗字じゃなくていい」
俺がふと、ガラにもなくそんなことを言うと、
Aは一瞬、目を大きく見開いた。
『....じゃあ十四郎さん、
私も一つ聞きたいことがあります』
「..何だ」
『..普段は、どんな暮らしを....
どんな人生を送っているんですか?』
「...どんだけ膨大で抽象的な質問だよ」
俺は鼻で笑いながらツッコんだ後、
Aに話し始める。
職業、仕事の内容、生活を共にする仲間の話...
主に真選組での話をするしか無ぇんだが...
俺が話している間のAは、
言葉一つ一つに相槌を打って、真剣な顔で聞いていた。
「....とまぁ、俺の今の生活はそんな感じだ
こんな話聞いて、アンタ楽し________
っ..おい...!どうしたんだよ...」
ざっくり話し終え、ふと横のAを見ると、
両目からポロポロと、大粒の涙を流している。
『っ..あれ、私..っ....
何でこんなに..っ...泣いてんだろ...』
袖で目を思い切りこするA。
「よっ..よく分かんねぇけどもう今日は寝ろ..!
いきなり知らねぇ男が来て疲れてんだよ...!」
俺も、突然泣き出したAにテンパってしまい、
よく分からない御託を並べ、
Aの肩を持ってベッドに寝かせた。
『...っ...ひっ..く....』
Aは俺に背中を向け、布団を頭まで被る。
はぁ....ますます訳が分からねぇ。
結局こいつのことは何も聞いていない。
いやむしろ、目の前で意味も分からず泣かれて、
あーだこーだ、もう聞けねぇだろ...
そんなことを頭でぐるぐる考えていると、
泣き疲れたのか、規則正しい寝息が聞こえてくる。
俺は、そっと布団を首元まで下げて、
Aの顔を覗き込んだ。
Aの頬にいくつも付いた、
涙の跡をそっと撫でる。
「....なーにを1人の女に振り回されてんだか」
俺はそう呟き、松葉杖を手に取って立ち上がった。
_______その瞬間、
『...んね』
Aが、寝言らしきものを言う。
『....ごめん、ね...
生き、てて...ご、めんね...』
途切れ途切れで聞き取りづらかったが、
Aは確かにそう言った。
”生きててごめんね”と。
30人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リヴ - ていさん» 私も銀魂の小説書いてます!ていさんほど上手くないですが、ぜひちらっと見ていただけたら嬉しいです!! (2021年1月5日 11時) (レス) id: 3a05cdac75 (このIDを非表示/違反報告)
てい(プロフ) - リヴさん» 勿体ない程のお褒めの言葉ありがとうございます(TT)完結まで暖かく見守ってくださると嬉しいです!! (2021年1月5日 11時) (レス) id: 51fbc336c0 (このIDを非表示/違反報告)
リヴ - 語彙力が素晴らしいです!ていさんの作品色々読ませていただいたんですが、どれも面白くて…!尊敬してます!更新頑張ってください! (2021年1月5日 10時) (レス) id: 3a05cdac75 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:てい | 作成日時:2020年12月20日 6時