私は稀有な異能の子 ＊2＊【文スト】太宰治

儀式 ページ13

〜No side〜



あれから2日後の午後3時。

燗華凌御殿には1000人ほどの
白装束に身を包んだ信者達が
礼拝堂に向かって頭(ｺｳﾍﾞ)を垂れていた。

皆、ひたすらに頭を下げ、
何かをブツブツと呟いている。


？｢皆の衆、仮神様がお見えなられる！｣


1人の女性が礼拝堂の脇から出てきた。
この人物は、そう、Aに異能力をかけ、
洗脳した張本人であった。

信者たちは、｢指導者様ダ、顔を上げなくてハ｣
｢仮神様がお見えになられル｣などと
口々に呟きながら礼拝堂へと視線を向ける。

しばらくすると、女性が出てきた
反対側の脇から、深紅の衣を身につけた
細身のAが出てきた。

露出が多い、インドの民族衣装の様
であるが、腰には長い半透明の
レース生地が施されている。

頭に刺さった輝きを放つ簪(ｶﾝｻﾞｼ)に、
赤のヴェールが歩く度に波を打つ。
首飾りも金を主張したもので、
非常に"華やか"という言葉が
合っている。

信者達は皆Aに釘付けである。

そして礼拝堂の中央にある
大きな銅像の前にAが立つ。


｢我は仮神、この受継の儀を持って
燗華凌教の神となる！｣


自信に満ち溢れたような表情を
しながらAは叫んだ。

すると、釘付けになり、黙り込んでいた
信者達は、一斉に雄叫びを上げた。


｢静まれ！｣


Aが雄叫びに負けず劣らずの声で
一喝すると、一気に静まり返る。

Aは満足したような表情に
なったかと思うと、その場に
座禅のような体勢で座り、目を閉じた。

すると礼拝堂の傍にいた大柄な男が
お盆の上に1つの小さな器をのせて、
Aの前に跪(ﾋｻﾞﾏｽﾞ)いた。


男｢仮神様、聖杯でございまス。
どうぞお納めくださイ。｣


声と同時にAは目をゆっくりと開け、
そのコップのような金色の
小さな器を手に取った。

中には赤黒い液体が入っている。

この液体は燗華凌教に古くから
伝わる聖杯である。

木の実をすり潰した物をじっくりと煎り、
それを"神の血"と呼ばれる、壺に入った
液体と共に混ぜ合わせる。
そこに穢(ｹｶﾞ)れなき人の血を
一定量混ぜ合わせ、更に煮る……

これが燗華凌教に伝わる聖杯。

Aはその器を眺め、匂いを嗅ぐ。


(少し不思議な匂いなのだな)


そう思いながらも、一思いに
その液体を飲み干した。


(……かなり癖のある味だ…)


少々顔をしかめながらも、コトリと
お盆の上に器をのせた。

すると男はまた礼拝堂の脇へ消え、
また新たに大きめな器を持ってきた。

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