悪魔に愛されるということ ページ14
いまだに名前を教えてくれないこいつはまるで抱っこをせがむ子供のように両手を私に広げて、あぐらをかいて座っている。
私がその広げられた両腕のうち片腕だけを自分の両手で引っ張りあげる。乱暴にしたせいか、いてて、という声が聞こえた。
私のおかげで立ち上がることのできたこの人はもう離してもいい私の片手を握っている。
何か言いたいことがあるのかと考える私の頭はこの男の肩の上にあった。
他人の匂いがする。小学生のころ、友達の家に遊びに行った時にかんじる匂い。自分ではない匂い。
新鮮で懐かしくてその匂いを堪能していたら腰に腕をまわされていた。
『.........』
零「............」
お互いなにをしているのだか。全く不思議だがこいつが私に好意があるのなら不思議な行動ではないのだろう。でも、人肌恋しかったり甘えたりしたいのかもしれない。大人びた性格をしているこいつでもまだ高校生という子供なのだからそうであってもおかしくないんだ。
そう解釈した私は握られていない方の片腕をこいつの腰にまわした。
少しくらい甘えさせてやろう。きっと何処でも大人ぶって格好つけたがりしているんだろ。
『...........そろそろ、パソコン室へ連れて行ってくれ』
零「......おう」
2人はお互いの絡み合った腕を解いて何事もなかったかのように明るい場所まで歩いて行きざわめきの中に消えて行った。
零「此処がAV室。パソコンってのがあるからココで作業するといいぜ」
『ありがとう』
私はあまり汚れてないイスのある机に座りパソコンを起動させた。
零「すげー、俺様全然分かんねーわ」
『電源をいれただけなんだがな』
パソコンを覗き込んでいたこいつはじゃ、俺やることあるから、とAV室から出て行った。
私はパンフレットを見てWordを開き下書きを基に打ち込んでいった。
あのっ、すみません!
カタカタとタイピングするのをやめ声を掛けてきた生徒を見やると下書きを渡した生徒だった。
「頼んだパンフレットの事なんですけど、僕、手が空いたのでパンフレット作りは任せてください」
『看板や装飾に結構時間がかかると思うけど、まだ40分くらいしか時間が経ってない』
「その事なんですけど、僕の学年どころか学院全体がキャンパスへの準備を手伝い始めて...なので看板も装飾も他の皆んながやってくれているんですよ。
僕は手が空いちゃたし、貴方にパンフレット作りを任せっぱなしにするわけにはいかないので僕に任せてください」
私は生徒に席を譲った。
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作者名:どこぞの二次元オタク | 作成日時:2020年2月12日 9時