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『ボーカルの女の子どうしたんだろう』
『去年のニバスタから変わってた気がする』
『いや絶対前のが良かったし単なる不調でしょ
あの歌い方で本人達も良いとは思ってないと思う』
…深追いしすぎては良くないと思いつつも、
あの男性の言葉やリプライが気になってしまって、
そこからどんどんそんな呟きを探していくようになった。
ニバスタやMC優勝の影響もあるのか、
バンド自体の知名度や人気が高まっていて、
前よりも断然多くの人が関心を持ってくれているのだろう。
私のことに関するツイートを自分から見に行っては、
やっぱりそうだと落ち込む。
こんなことしたって何も変わらないとは分かっていながら、
気になる気持ちの方が強くて…
大「…Aちゃーんっ」
「わっ、…忠義君」
大「え、何？笑」
「…何でも無いです…」
スマホに夢中になっていたら、
ソファの後ろから抱き着いてきた忠義君に気付くのも
ワンテンポ遅れた。
咄嗟にスマホの画面を隠した私に、忠義君が首を傾げて笑う。
…せっかく私のことを考えて
ツイッター管理してもらうようになったのに。
しかし、忠義君は数秒してから「あ、」と声を出した。
大「…ツイッター、あんま見過ぎたらあかんで」
「えっ…」
大「やっぱり…見てたやろ？」
それまでにこにこしていた表情がちょっと真剣になって、
動揺する私の目を真っ直ぐ捉える。
大「最近やけにスマホ見てるなぁって思っててん」
「…」
大「チラッと見える画面も大概ツイッターやし…
もしかしてとは思ったけど、
バンドのことそれで調べてんのかなって気になってたんや」
否定しない私の反応を見て、今度は少し叱るような顔で。
大「Aちゃん、あかんよ。」
「…」
大「軽い気持ちで言葉も選ばんと書いてる人もおるんやから、
全部受け止めて考えてたら
Aちゃんがしんどくなってまうだけやで」
いつになくしっかりした喋り方で、両肩を掴まれて、
私はその思いやりからほんの少しだけ目を逸らした。
何となく、その真剣な瞳を見つめ返せなかった。
大「気になるんは分かるけど…ほどほどにな？」
「……はい」
忠義君に念を押されて、ようやく返事をしたけれど。
控えようとは思っていても、一人になれば
見てしまうのが癖になっていた。
そして私は、更に深い沼を見つけ出してしまう。
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作者名：黒葡萄
| 作成日時：2022年5月5日 8時
